相続した地方不動産の処分〜体験的負動産(実家)処理〜

両親が今の平均寿命より10歳以上早く他界したため、親族が住まなくなった実家の扱いにはかなり悩まされました。地方に実家があって、進学・就職先が東京あるいは首都圏の住人は多かれ少なかれ、<負動産の時代>を迎え、実家の取り扱いに苦悩されていることと思います。

まだ親御さんがご健在な場合でも、さらに年を重ねれば、いずれご両親は高専賃やサ高住へと移り住み、実家は空き家になってしまう可能性は高いでしょう。


ここで、誰も住まなくなった実家が<負動産>といわれる理由を簡潔に整理しておきます。

1)利用されていない空き家にも固定資産税がかかること、建物価値はゼロだとしても土地に対して地方とは思えない法外に高い固定資産税が課されています。
2)建物価値はゼロでも人が住まなくなった家は等比級数的に劣化すること
3)地方に散見される戸建て住宅にはたいてい植栽があって、庭師が入らなくなるとあっという間に荒れ放題となつて、近隣住人の大迷惑となること

となれば、親が住まなくなれば、一刻も早く売却するのがベストな選択肢です。自分の場合は、親が亡くなったあと、20年近く、友人の友人(他人)に東京のマンションの駐車場月額賃料程度の家賃で90坪近い戸建て住宅を貸していました。年間賃料でかろうじて固定資産税を賄えるレベルでした。サラリーマンであれば、実家も賃貸事業として損益通算できますから、墓参などの費用も経費処理できるので、貸せれば貸しても構いません。

経済合理性を第一に考えるような自分でも、いざ実家を手放すとなると、心理的に躊躇いが生じ、幸い貸せたので貸しました。売却してしまえば、両親と過ごした(いい)時代の思い出のつまった箱が消えてなくなってしまうからです。ファミリーヒストリーに加え、兄弟姉妹がいれば感情的に反対する人もいますし、代々相続してきた本家の類であればご先祖様に申し訳ないなどなど、少なからず心理的精神的障害が実家売却を妨げます。

しかし、お子さんのいる中年以上の皆さんにはこう言いたい。負の遺産を放置すれば、あなたの子供があなたに代わって苦労するのですよと!出来た親であれば、介護状態になる前に、とっとと身辺整理をして先の高専賃などに住み替えをしているはずです。実家は手放し、余生を過ごすに足る資金を差し引き子供に残余を生前贈与するのです(孫への教育資金でも構いません)。今、現役世代の我々が苦しんでいるのはすべて親のせいです。<負動産>という概念が定着したのですから、我々が同じ轍を踏んではなりません。

ということで、我が実家(といっても古家解体後の底地)は2年前の秋、他人の手に渡りました。一番処分に困ったのは、思い出の詰まったアルバムのような遺品・遺愛品です。孫が祖父祖母のモノクロ写真を間違っても見ることはありませんので躊躇わず捨ててしまいましょう(まだ一部は手元にありますが・・・)。

環状道路に近い土地を結局1500万円弱で売りました。動き出して成約まで2カ月弱、近隣の取引事例を参考にして売却価格は少し低めに設定しました。ここで欲を出すと未来永劫売れません。複数の不動産業者を回って、レスポンスのいい営業マンに一任しました(意外にこの点が大事です)。売却の際、更地にして売りました。いわゆる古家有りだと買い手がなかなか現れません。自宅の大きさにも依りますが、解体費用(庭の木々や物置の撤去)に150万円、さらに仲介手数料や登記費用等も含めると250万円ほどかかりましたが、とまれ、実家売却プロジェクトは成功裏に終幕となりました。

次回は、都内の戸建てやマンションの将来を不動産投資の視点で考えてみることにします。自分の子供に<負動産>を残さないための知恵をご披露します。