出版不況と図書館の関係

一昨日、朝日新聞の「声」欄に、図書館が新刊本を貸し出すことの賛否について読者の投稿が掲載されていました。背景には、出版不況に喘ぐ大手出版会社や作家が公立図書館に新刊本を1年間貸し出さないよう要請しているという事情があります。

図書館もとんだとばっちりを受けたものです。図書館の過剰ともいえる充実ぶりが出版不況の元凶だという指摘には違和感を覚えます。確かに、図書館のベストセラー新刊に群れる利用者の胸のうちは<読みたいが買うまでもない>ということでしょう。だからといって、図書館が半年経てば忘れられるようなベストセラーを複数冊取り揃えるというのは如何なものかと思います。公共図書館の予算は削減される一方ですから、数冊ベストセラーを揃えたところで読める人の数は限られます。以前、刊行直後に『下町ロケット』を贔屓の武蔵野プレイス(全国屈指の図書館です!)で予約したところ、300番台の予約番号で驚いたことがあります(ブックオフで買いました)。『火花』はさらにその上を行くようです。予約待ちが1年なんて・・・・ありえない。読みたい人は買いますよ。

活字離れは今や社会現象、一般大衆が追っかけるのは専ら娯楽性の高いベストセラー。出版不況だけに売れない本が店頭から遠ざけられるのもむべなるかなです。出版不況の主たる原因は、スマホの普及によって瞬時に情報収集ができるようになり、もはや読書が大半の若者にとって魅力に乏しいものになっているからに他なりません。機械に飽きた人が紙の本に戻るという投稿者の希望的観測も絵空事でしょう。なにより、掲載された投稿者6人の最低年齢が44歳・・・紙媒体の新聞購読者さえ今や少数派であることを実感します。

数日前、JR通勤電車のなかでハードカバーを読んでいる妙齢の女性2人が近くに居合わせました。老いも若きも社内でスマホを手に取る光景が日常化するなか、しおりを時折り移動させながら活字を追う表情がとても新鮮でした。たまに図書館のシールを貼った本を手にする人も見かけます。いずれこうした光景も消えゆく運命なのかも知れませんね。