創造と神秘のサグラダ・ファミリア@恵比寿ガーデンシネマ

記憶にないくらい久しぶりに恵比寿ガーデンシネマを訪れました。今年3月、4年ぶりに復活したのだそうです。吉祥寺のバウハウスシアターといい、都内でもミニシアターはなくなる一方ですから、映画ファンには待望のリニューアルオープンといっていいでしょう。劇場はスタンドカフェも併設し全体的にクラシックな佇まい。壁の額装されたモノクロ写真が素敵なインテリアのアクセントになっています。東京のミニシアターのなかでは指折りの快適空間だと思います。

今回観たのは、完成まで300年は要すると云われているアントニ・ガウディの傑作「サグラダ・ファミリア」を今なお造り続ける建築家や職人にフォーカスしたドキュメンタリー映画。1992年のバルセロナオリンピックが終わった直後に現地を訪れて以来、未完のサグラダファミリアがどうなっているのか気になっての鑑賞というわけです。

ガウディ没後100年にあたる2026年の完成を目指して、工事は急ピッチで進められています。2010年11月にはローマ法王ベネディクト16世が当地でミサを行い、サグラダ・ファミリアをバシリカ(王の列柱廊と呼ばれキリスト教の世界では特別な聖堂を意味します)に認定しています。世界遺産にも認定され、今や年間300万人以上が訪れる観光地。20年以上前に訪れたときのようにゆったりと鑑賞できる状況ではないようです。

映画のなかで、日本人彫刻家の外尾悦郎さんがご健在で幾度もインテビューに応じています。生誕のファサードを飾る天使像群は外尾さんの作品です。ガウディが指定した様々な楽器を奏でているのが特徴的です。受難のファサードの彫刻を担当したジョセップ・スピラックスさんはカタルーニャ出身、角張って抽象化された造形は当初物議を醸したようですが、ガウディから少し離れた立ち位置で時代に即した表現をめざして制作したのだそうです。ガウディのプランやアイディアを後世の建築家や職人が資料を基に忠実に再現しようと努力する一方、世紀のプロジェクト推進にあたって斬新な創意工夫が加えられ最新のテクノロジーが活用されていることを知りました。

ガウディがが遺した言葉やスペイン内戦の戦火を免れた貴重な資料をめぐって、果てしのない解釈が続けられています。サグラダ・ファミリアの尽きせぬ魅力は、ガウディの遺志を承継しようとする人類の壮大なロマンにあるのでしょう。