ギリシャ危機に揺れる世界経済〜そもそも事の発端は粉飾決算〜

今や、本棚の肥やしと化したジャック・アタリの『国家債務危機』の奥付を見ると、2011年1月とあります。2009年にギリシャの財政危機は発覚し、東日本大震災のあった2011年4月に本格化したのでした。ギリシャに端を発したソブリン・クライシスは瞬く間に財政基盤の脆弱な南欧諸国へと飛び火し、同年11月にはイタリアやスペインの国債利回りは7%を超えた水準にまで達しました。ブルームバーグヒストリカルチャートを見ると翌2012年3月になんとギリシャ国債利回りは37%に達しています。当時、機関投資家が投げ売りした円建てスペイン開発金融公庫債を買い込んでいたので、心中穏やかではありませんでした。

ギリシャの財政危機とはそもそも何か、ひと言で言えば<国家の粉飾決算>ということになります。2001年に統一通貨ユーロが導入されたとき、ギリシャは加盟要件である次の要件を満たしているとして、通貨同盟に加わることができたのです。

◎国の債務残高をGDP比で60%以内
財政赤字GDP比で3%以内
◎もしくは、国の政策的に上記水準を満たすことが可能であること

ところが、実情はというと債務残高は100%を超え、財政赤字も13%前後で加盟要件を充足していなかったわけです。米ゴールドマン・サックスデリバティブ取引を提案していわゆる「飛ばし」に加担したため、表面上はこうした実態が隠ぺいされてしまいました。そして、2009年、ギリシャ政権交代が起こると、新政権がひた隠しにしていた実態を暴露してしまいます。

ギリシャはECB、IMF欧州委員会に詫びを入れ、かろうじてデフォルトを免れます。しかし、緊縮財政を余儀なくされたギリシャ国民の不満が次第にエスカレート、とうとう本年1月に緊縮財政の廃止を訴えた急進左派連合が政権を奪取します。

その流れで、チプラス首相は7/5に国民投票を実施します。ユーロ圏の優等生ドイツにしてみれば「せっかく救済してあげたのに何だよその態度は、逆切れかよ」ということになります。

結局、過度な緊縮財政(国民の1/4が公務員だった役人天国・・・公務員の大幅な削減は失業率を増大させました)を強いたECBやIMFにそのツケが回ってきました。情けは人のためならずということですね。

ちなみに2010年の日本の公的債務はGDP比199%でした。国内で95%余りの国債が消化される上、日本の長期金利は低いので、欧州債務危機対岸の火事に過ぎないと主張する識者も多いようですが果たしてそうでしょうか。公的債務の削減は日本にとって喫緊の課題のはず、選挙のときだけ俎上に載りますが喉元過ぎればでは困ったもんです。

アタリ氏は次のように述べています。

「公的債務に関しては、経済学も通用しないし、実際的な指標も存在しない、必要なのは<断固たる政治的意志>である」

日本がギリシャにならない保証なんてどこにもありません。