アファナシエフの平均律クラヴィーア@トッパンホール

6月25日(木)、トッパンホールで開催されたヴァレリー・アファナシエフのコンサートを聴いてきました。プログラムはバッハの平均律クラヴィーア曲集から7曲とオーラルミュージックと題する現代の楽曲で構成されていました。お目当ては勿論アファナシエフ平均律クラヴィーア。

アファナシエフは1947年生まれ、74年にベルギーへ亡命し現在はヴェルサイユに暮らし、精力的に演奏活動を展開する一方、フランス語で詩集やエッセイを出版したりと音楽という枠組みにとどまらない活動で注目されています。

トッパンホールには今回で3回目の登場だそうです。鬼才と称されるだけあって、アファナシエフの風貌はいかにも思索者風、哲学者然としていると言い換えてもいいでしょう。広い額とオールバックの髪型が印象的です。

着慣らした黒いジャケット姿で登壇すると、斜めに構え観客に軽くお辞儀をしただけで大型のスタイウェイに向かいすぐに演奏が始まりました。短調前奏曲とフーガをゆったりとした間で奏でるのがアファナシェフスタイル。一曲終わるたびに気難しい表情でスコアを折り畳み、次のスコアを譜面台に用意します。静まり返った会場に残響音が長く長くこだまします。ピアノという楽器の表現力を改めて見せつけられた気がしました。

20分のインターミッションの間にコーヒーを飲んで覚醒。後半は前半と打って変って躍動的な選曲の構成で観客を魅了してくれました。今回、チケットを手配してくれた知人弁護士とは終演後出口で鉢合わせ。仕事でコンサートに間に合わず、アンコールだけかろうじて聞けた由・・・申し訳なく帰路タクシーの中で感想を伝え別れました。

1983年のホロビッツの来日公演は物議を醸しましたが、68歳のアファナシエフは健在でした。帰りに今年2月に録音されたばかりのベートーベヴェンのピアノ・三大ソナタ集CD(初回限定版でDVD)を買い求めました。しばらく「悲愴」を聴きながら仕事に励むことにします。