都知事選で気になる<泡沫候補者さん>の乱立~過去最多の22人が立候補~

18日に告示された2020年の都知事選立候補者数は過去最多の22人(下のグラフは過去の都知事選立候補者数推移です)。このうち、メディアが取り上げるのはわずか5人に過ぎません。届け出順に山本太郎小池百合子宇都宮健児、小野泰輔、立花孝志・・・。告示日翌日に数寄屋橋交差近くのポスター掲示場にポスターが貼ってあった候補者数は10人、こうなると気になるのはメディアから見放された<泡沫候補者さん>たちの立候補動機です。

日本国民で18歳以上(2015年に諸外国に倣い公職選挙法等の一部が改正され選挙権年齢が引き下げられています)になれば、消極的要件に抵触しないかぎり、選挙権を行使することが出来ます。ところが、大多数の国民にとって無縁と思われる被選挙権行使には先ずお金が掛かります。選挙の種類によって金額は異なりますが、当選を争う意志のない人や売名目的者の立候補を防ぐために、立候補者は法務局に「供託金」を預けることになっています。衆議院小選挙区都道府県知事選挙の場合、供託金300万円が必要になります(高すぎではないでしょうか!)。しかも、選挙が終われば無条件で返還されるわけではありません。有効投票総数の1/10(没収点)未満しか得票できないと全額没収されてしまうのです。

2016年の都知事選の有効得票総数は486万9098票でした。その10%に当たる486,909票は葛飾区や品川区の人口を上回り、獲得するのは至難の業です。2016年都知事選ではなんと12人もの候補者が供託金没収の憂き目に遭っています。確固たる政党の支持なくしては供託金没収は確実といっていいでしょう。いわゆる三バン(地盤・看板・鞄)を備えていないかぎり、100%落選という構図は今も昔も変わりません。

そんな負け戦必至で経済合理性0の都知事選に<泡沫候補者さん>たちは何故挑むのでしょうか?今回の都知事選に立候補した<泡沫候補者さん>の略歴を見ると、政治と無縁の元会社員、自営業者、元公務員が大半を占めます。年齢別では30代が7名と気を吐いています。30代であれば、今後区議会議員や市町村議会議員をめざすという選択肢もあるので、都知事選を絶好のPR機会と見て立候補という動機もなくはないでしょう。それでも、300万円という費用対効果には見合いそうもありません。

泡沫候補者さん>とあえて敬称をつけて呼ぶのは、出血覚悟で政治参加する彼らの心意気に敬意を表してのことです。令和2年1月1日現在の東京都の人口は13,951,636人、うち今回の都知事選の選挙人名簿登録者数は11,444,260人。人口の多さでは世界の国々で75番目に匹敵する規模にある東京都のトップは、まさに国家元首に相当します。財政規模では北欧の雄スウェーデンさえ凌ぐのですから。政権政党がまともな対抗馬を立てられず、人気投票を容認するような今回の都知事選は茶番としか思えません。

泡沫候補者さん>たちの立候補動機は、きっと十人十色、直ちに理解できそうにはありませんが、その心意気や善しとします。従来のどぶ板選挙から、SNSや双方向のビデオ会議を駆使した選挙戦が主流となって、既成政党以外の候補者が活躍できる機会が拡がればと切に願っています。昨日、JR吉祥寺駅前で見かけた山本太郎候補(写真上)をはじめ、現職以外の候補者さんたちの健闘を心から祈っています。

P.S. 記事を書いているうちに、<泡沫候補者さん>たちを取り上げた本がいくつか刊行されていることに気づきました。2冊ご紹介しておきます。ブックレビューのこんな意見に大賛成です。

<<こうした素人のような選挙活動こそが選挙の原点で、国政地方を問わず政治屋一家が地盤看板を引き継いて行っている日本の選挙制度こそがおかしい。供託金も他の先進国より多過ぎるとあるし、立候補者の在り方(メディアの偏らない報道、供託金を下げる、同選挙区の世襲は禁止等々)の選挙制度を変えることが必要だと思った。>>

(038)泡沫候補 (ポプラ新書)

(038)泡沫候補 (ポプラ新書)