朝日新聞論壇時評「希望」が幻想だったわけ


小熊英二おぐまえいじ)氏が、論壇時評(10月26日付朝日新聞朝刊)で今回の衆議院選挙の顛末を的確に総括しています。今夏の都議選で勢いづいた小池新党がなぜ惨敗したのか、小熊氏は公明党選挙協力の有無が明暗を分けたと分析しています。

希望の党は25の東京小選挙区で23人の候補を擁立し、蓋をあけてみれば、当選したのはわずかに21区の長島昭久だけでした。衆議院の各小選挙区に2〜3万票の組織票を有する公明党が手を引けば、結果は自ずと明らかだったというわけです。

小池ブームはそもそも存在しなかったのだという謎解きは明快です。小池ブームを煽ったのはまたしてもメディア、氏は夏の都議選は大阪で起きた維新ブームの変形に過ぎなかったのだと喝破しています。小池が公明党党首山口那津男氏を総理にという発言にもっとメディアは注目すべきだったのです。

ここからは持論です。安保法制に反対だった民進党が小池新党ブームに便乗して解党を決めた暗愚もさることながら、公明党の節操のなさも指摘されて然るべきでした。国政では与党連立、都議選では小池支持とは奇妙な構図です。都議選において、小池百合子を忌み嫌う有権者の声が届かなかったのは小池支持に回った公明党のせいです。創価学会員が「F」と呼ぶ友人声掛け運動も小池新党の集票に一役かったことは間違いありません。

政界には「渡り鳥」と呼ばれる議員が大勢います。唾棄すべき存在なのでいちいち名前は挙げませんが、小池都知事もそのひとりです。ときの政権に擦り寄り保身を図る理念も主張もない「政界渡り鳥」には要注意です。選挙の際には候補者の略歴よりも過去の政治活動歴や党歴に注目すれば、自ずと生き様が見えてくるものです。衆議院選の潮目が変わったとみるや、都知事の椅子にしがみつき、開票日にはパリ滞在という敵前逃亡さながらの小池都知事の記者会見は噴飯ものでした。「鉄の天井」とは笑止、安っぽい野心と素性が顕わになっただけのことです。