BREXIT審判の日を迎えて

23日の今日、英国全土382の集計所でEU離脱の是非を問う国民投票が行われます。投票日が近づくにつれて、株式市場も為替市場も神経質な展開となっています。2014年9月のスコットランド独立をめぐる住民投票以来、なにかとお騒がせの英国がただでさえ不透明な世界経済の行方に暗雲を投げかけています。視界不良どころではない情況と言い換えても構いません。

キャメロン首相はなぜかくも世界的混乱を招く国民投票を選択したのでしょう。時は2013年1月に遡ります。当時のユーロ危機と移民急増で反欧州派が増長するなか、半ば妥協の産物として或いは懐疑派のガス抜きを狙って、キャメロン首相は国民投票という危険な賭けに出たのです。EU残留が多数派だったため国民投票が無難な結果に終わるという皮算用があったればこそ、ところが、昨年の100万人超のシリア難民が欧州各国に押し寄せるという事態が生じ、EU域内の「開かれた国境」が却って火薬庫と化してしまいました。英国はもとよりシェンゲン協定に参加していませんから、国境管理は依然として英国政府の主権行使の対象です。それでも、海の向こうで起きている難民問題に英国民は目をそらすわけにはいきません。

あらゆる事象を賭けの対象にするお国柄、EU残留か否かもその対象になっています。主要ブックメーカーのオッズを見るかぎりEU残留が圧倒的に優勢ですが、株式市場はサンプル数が必ずしも十分ではない世論調査の結果に連日一喜一憂し疑心暗鬼に陥っています。日本時間24日9時にはCity of Londonの票が空くので間違いなく大勢が判明します。果たして英国民はいかなる選択をするのか、一投資家として心中穏やかではいられません。ポジショントークに他なりませんが、願わくば大差でEU残留という結末に期待しています。

というのも仮に僅差でEU残留ということになれば火種は今後もくすぶり続けるからです。ローマではEU懐疑派の五つ星運動が擁立 したビルジニア・ラッジ候補(37)が勝利、EU発足時のメンバーであるフランスやイタリアでも懐疑派勢力が台頭しており、当初から加盟国同士の結束が緩いEUの存立基盤が危うくなっています。26日にはスペインで総選挙、来年は仏大統領選・・・と大きなイベント続きで遠い欧州の政治情勢に目が離せません。