静嘉堂文庫美術館〜茶道具名品展〜を訪れて

世田谷区岡本にある静嘉堂文庫美術館を訪れ、三菱財閥を創業した岩崎彌之助とその嗣子小彌太が蒐集した茶道具の一級コレクションを鑑賞してきました。都内に数ある美術館のなかでも、静嘉堂文庫美術館はお気に入りのひとつ、国分寺崖線の一画にあって豊かな緑を湛える同美術館は、コレクションだけではなく立地も魅力のひとつです。

静嘉堂とは『詩経』から採られた彌之助の堂号に由来するそうです。<籩豆静嘉(へんとうせいか)ー静嘉堂120年のあゆみ>と題するパンフによれば、祖先の霊前への供物が立派に整うことを意味するとあります。

茶の湯のたしなみのある方にとって今回の展示品は垂涎の的、予期したとおり会場には和服姿の女性の姿が目立ちました。お蔭でこじんまりとした展覧会場が優雅な雰囲気に包まれ、ゆっくりと時間をかけてコレクションを鑑賞できました。数年ぶりに見る国宝曜変天目(稲葉天目)茶碗の存在感はやはり格別でした。世界に三点しか存しない中国福建省曜変天目がすべて日本にあるという奇蹟(他は大徳寺塔頭龍光院と大阪・藤田美術館蔵)、まだ見ぬ二点もいずれ鑑賞したいと思っています。

今回、井戸茶碗などの豪商伝来の茶器(黒樂等)よりも心惹かれたのは、茶道具の方でした。千家十職(せんけじっそく)の手になる茶釜や茶杓からは、代々受け継がれてきた美意識の凄みが伝わってきます。利休の茶杓と共筒(銘「両樋」)をじっと見ていると、二畳隅炉の茶室を髣髴させてくれます。

会期は3/24まで、お薦めの展覧会です。