「毛利家の至宝」展は見逃せません

今年のGWの最大の収穫はサントリー美術館で開催中の「毛利家の至宝」展でした。会期(4/14〜5/27)は1ヶ月余りと極めて短いので未だご覧になっていない方はお見逃しなく。10年ぶりの東京公開だそうです。

お目当ては、勿論、特別公開される雪舟等楊作「山水長巻」(四季山水図とも称されます)です。長さ16メートルに及ぶ<四季山水図>を見て先ず驚いたのは保存状態の素晴らしさでした。予備知識なく対面していれば間違いなく近世の作品だと勘違いしたことでしょう。作品の完成年は室町時代後期にあたる1486年ですから、500年余りも伝世されてきたことになります。この作品の献上された大内家を皮切りとして大名家に代々伝わり大切に保管されてきたことが窺えます。

露天に並ぶものも数えれば「雪舟」を名乗る作品は十万点を超えると云われます。されど、「雪舟」の真筆と折り紙のついた作品は僅か8点、その内6点が国宝に指定されています。「雪舟」の作品が日本絵画の最高峰とされるわけです。

「山水長巻」図は大内氏の遣明船に絵師として随行したときの体験を基に、帰国後豊後で描かれたそうです。淡泊な水墨画を想像してこの作品に対峙すると裏切られます。松葉には鮮やかな緑が、そして衣裳には明るいという具合に彩りが施され、効果的に配されたパートカラーが水墨画に絶妙のアクセントを与えています。帰国後に記憶を頼りに描かれたとは思えない見事な構図は圧巻でした。視線をゆっくり右へ移動すれば移ろいゆく四季が堪能できます。絵巻物ならではの楽しみではないでしょうか。展示ケースの上部には写真も飾られていますが真作と比較するとかなり見劣りします。後世に描かれた模写作品も同様です。

写真製版では再現不能な真筆「山水長巻」は必見です。ここでは詳しく触れませんが、「高野切」もお見逃しなく。