国家債務のデフォルトについて考えてみる

連休明けはフランスの政権交代ギリシア政局の混乱の影響でダウも日経平均も急落しています。落ち着きを取り戻したかに見えた為替相場円高基調に逆戻りしたので、個人的には株式市場は当面調整が続くのかなと思っています。信用不安の払拭には相当な時間が掛かりそうです。一時的に混乱が沈静化しても油断は禁物です。

昨日、欧州委員会がユーロ圏の2012年度実質経済成長率見通しを発表したので、ギリシアに続く国家債務のデフォルトについて考えてみることにします。南欧諸国の成長率が下方修正された結果、ユーロ圏17カ国中7カ国がマイナス成長になるようです。スペインやイタリアがギリシアのようにデフォルトするという可能性を排除するわけにはいきません。

一口に債務不履行(デフォルト)と云っても、国家の場合には対内債務と対外債務に分けて考える必要があります。後者の場合は自国以外に影響を及ぼすのでより深刻な事態を招きます。デフォルト定義にはリスケやモラトリアム、デノミも含めて考えることにします。さて、国家のデフォルトと云えば98年のロシアや01年のアルゼンチンが記憶に新しいところですが、調べてみると第二次大戦後だけでも内外債務についてデフォルトした国家は60カ国前後、現国連加盟国193の1/3弱にあたる国家がデフォルトを経験していることが分かります。我が祖国日本も戦後まもない1946年に新円切り替えに伴い預金封鎖していますので、デフォルト経験国ということになります。

巷には預金封鎖の可能性を声高に叫ぶ経済評論家も少なからずいて、キャピタルフライトも現実に起こっているようです。日本国の破綻はあり得ないと考えるほど自分は楽観主義者ではありません。長期にわたる政治的混迷のせいで、公的債務の削減という最も重要な政治課題には解決の道筋すらつけられてはいません。サルコジ大統領に財政再建のための具体的提案を行ったジャック・アタリ氏は『国家債務危機』のなかでこう述べています。

<いつの時代においても、債務を解決する信頼性のある唯一の方法とは、富の増加である。(中略)本当の富とは、フローではなく、金融であろうが文化であろうが、資産というストックなのである。(中略)世界の金融システムは、資産価値を持続的に成長させるために、持続的成長をもたらす公共投資ファイナンスしなければならない>

全く頼りにならない国家や自治体のその場凌ぎの経済・福祉政策を信奉するのはそろそろやめて、個人個人が経済的自立をどう維持するか真剣に悩み、正しいと信じる処方箋を実践すべきです。家計において見過ごしてしまいがちなストックの計量化に先ず取り組むといいでしょう。そして何より、必要なのは家計の複式簿記化でしょうか。長くなったので続きはあらためて稿を起こすことにします。

国家債務危機――ソブリン・クライシスに、いかに対処すべきか?

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