日本民藝館〜河井寛次郎生誕120年記念展〜


いつ訪れても居心地がいい美術館は日本民藝館をおいて他にはありません。正面入口の階段を昇って2階の西側に回り、長椅子に腰を下してしばし棟方志功の板画を眺めていると時の経つのを忘れてしまいそうになります。今回の記念展覧会では、民藝運動の主唱者柳宗悦が選んだ日本民藝館所蔵の河井作品に加え、京都東山区五条坂にある河井寛次郎記念館の収蔵品も展示されていました。陶器、木彫、デザイン、書や詩文と多彩な河井作品のなかで今回一番心惹かれたのは陶板額でした。美しい木彫りの額縁に陶板が埋め込まれ<ないものはない/見るだけしかない>と詩文が刻まれたものです。戦後まもない昭和22年に上梓された『いのちの窓』に所収された一文だそうです。河井寛次郎の美学や世界観の一端に触れた気がしました。第2土曜日は日本民藝館の西隣にある柳宗悦邸も開放されているので書斎を中心に中を覗くことが出来ました。柳が生前家族と庭で食事を共にしている写真が有名ですが、邸宅から庭を眺めているとありし日の柳家の団欒があたかも目の前にあるような錯覚に囚われました。次回は柳が愛したという花海棠(はなかいどう)が咲く頃に訪れようと思います。大好きな木喰仏にまた会えますように。