陶芸家辻村史朗篇:期待外れのNHK<プロフェッショナル 仕事の流儀>でした!

ときどき気になる人物が登場すると視聴するのがNHKの<プロフェショナル 仕事の流儀>。スタートは2006年ですから、かなりの長寿番組です。番組タイトルがプロフェッショナルとくれば、著名人を思い浮かべがちですが、番組は寧ろ市井のその道の達人を取り上げることに積極的です。ともすれば埋もれてしまいそうな人々を発掘してくるところが番組の大きな魅力なのです。最近、特に印象に残っている人物を挙げるとすれば、#435の笹餅職人桑田ミサオさん(2020/6/2)と#462の家政婦タサン志麻さんのおふたりです。そうそう、#346(2018年1月8日放送)で知ったブルゴーニュでワイン醸造に取り組む仲田晃司のワイン(ルー・デュモン=Lou Dumont)を買い求めたこともありました。

6月15日の昨日(#482)は、国内よりも海外で高く評価されている陶芸家辻村史朗さんでした。以前、お取引したことのある銀座一穂堂から番組を知らせるメルマガが届き、ほどなく東武百貨店美術部のT氏からもLINEで同様のメッセージが送られてきました。早速、リアルタイムで視聴することに。

74歳の辻村史朗さんは、「媚びず、飾らず、躊躇わず」をモットーに、奈良市水間町(みまちょう)の山中で自然と共生しながら、黙々と自然釉を活かした作陶をなさっている陶芸家です。番組HPにはこんな紹介文が掲載されています。

【作ることが、生きること 陶芸家辻村史朗】ロバート・デ・ニーロなど名だたる海外セレブが愛し、メトロポリタンなど有名美術館も作品を所蔵する孤高の陶芸家が奈良にいる。辻村史朗、74歳。荒々しさと静けさが同居する作品は辻村の生き方そのものを映す。自宅は自ら山を切り開き井戸を掘り建てたもの。自生する野草やキノコを日々採り、畑で野菜を育て暮らす。作陶も独学、露天で売るところから始めた。生きることとは何かを問いかける辻村の日々を半年にわたり記録した。

辻村さんのありのままの天衣無縫な姿を撮りたいという意気込みは分かるのですが、番組の切り込み方(特にインタビュアーの質問)があまりに凡庸でした。結果、辻村さんから作陶の極意に迫る言葉を十分に引き出すには至りません。陶芸家の多くが「きれいに造りすぎている」という批判的態度の対極にある辻村さんの信念を、確たる造形を以て示すべきだったのです。おざなりの紋切型取材が災いして、制作者が主題である陶芸自体に興味や関心がないことが露骨に分かってしまいます。取材に要した時間の割りに、編集が稚拙だったのも一因かも知れません。例えば、辻村さんを陶芸に道に誘った無名の大井戸茶碗(日本民藝館蔵)との出会いをもっと掘り下げても良かったのではないでしょうか。

独学で陶芸を極め、試行錯誤の末に辿りついた境地をその作品と共に示してくれるに違いない、そんな番組への期待は見事に裏切られてしまいました。プロフェッショナルとはという問いかけに辻村さんはこう答えます。

「遊びを選んだだけ、遊びというのはアマチュア。だから、プロフェッショナルじゃない」