2020年8月西暦標高登山の記録~剣ヶ峰山(西武尊山)の標高は2020m~

8月最後の週末、普段より早い3:40に自宅(東京)を出発、6:00から登山開始のはずが目的地のミス入力でロスタイム1時間。後続車両が異常に少ないことに気づきながら、痛恨のミスを犯してしまいました。「裏見ノ滝」を入力しておけば良かったのですが後の祭とはこのことです。

めざす武尊山(ほたかやま)は、北アルプス穂高岳と区別するため上州武尊山とも呼ばれています。「ほたかやま」とか「すかいさん」と聞いて漢字が思い浮かぶ人は大抵山好きだと思っていいでしょう。

駐車したのは裏見ノ滝駐車場。そこから奥へ車で10分程度移動すると登山口にほど近い所に小規模な駐車場(写真直下)があります。その間、往復徒歩だと40分以上掛かりますので、省エネ派は朝駆けで後者を狙うべし。復路、登山口から裏見ノ滝駐車場までの道程が想像以上に長く感じられたことを付記しておきます。

さて、次なる問題は時計回りで周回するか反時計回りを選択するかです。ヤマケイアルペンガイドNEXT『日本百名山登山ガイド(上)』に紹介されているコースに素直に従い、反時計回りで当初の目的地の剣ヶ峰山(2020m)を目指しました。ところが、8時頃、須原尾根分岐に居合わせた私以外の登山者は例外なく時計回りで主峰沖武尊へ続く登山道を選択しました。<人の行く裏に道あり花の山>という投資格言に従えば道理かも知れませんが、下山してみれば、多数派の時計回りの方が肉体的な負担が軽いように感じられました。

武尊沢徒渉点から木の根道を急登、めでたく西暦標高の山「剣ヶ峰山(西武尊山)」にたどり着きました。2017年に大フィーバーした東京都最高峰雲取山(2017m)以来の西暦標高登山になりました。残念だったのは木製山頂標識の文字がかすれていて、顔を近づけてアップで撮影しないと登頂証拠にならないことです。それでも顔を近づけて写メするカップルの姿を目にすると、自分と同類だと内心ほくそ笑んでおりました。



「剣ヶ峰山」を後にすると稜線伝いに主峰沖武尊(2158m)へ。ふたつの峰の標高差は僅か138mなのですが、この日は移動のロスタイムで精神的にも肉体的にも疲弊していたせいか、ザレ場から俄かに足が止まり一気に登ること能わず、CTより30分以上かかってしまいました。珍しく食欲も奪われ、おにぎり1個食べるのがやっとでした。山頂では、若いパーティが代わる代わる作り立てのカップヌードルを片手に記念撮影、隣のおじさんは徐にコーヒーを沸かしていました。そんな様子に癒されようやく人心地を取り戻し、山頂の景色を愛でながら、群馬県で最も高い一等三角点、展望図盤、石祠も確認することができました。西暦標高への思い入れのせいか、沖武尊から見る剣ヶ峰山の方が山容は百名山にふさわしいように感じました。

百名山に絞れば、近年の西暦標高は次のとおりです。

2003年 2003m 越後駒ケ岳(新潟県

2017年 2017m 雲取山(東京都)

2020年 2020m 西武尊山百名山武尊山に準じる)(群馬県)

2034年 2034m 美ケ原 (王ヶ頭)(長野県)

2035年 2035m 吾妻山 (新潟県福島県)

山頂に滞在すること半時、今度は手小屋沢避難小屋めざして下山を開始。途中、「行者ころげ」と呼ばれる鎖場が連続、テキストどおり3点支持を忠実に守って、何とか難所を切り抜けました。下りの方が危険性が高いので時計周りが多数派なのかとぼんやり振り返りながら、歩を進めました。相変わらず後続の気配は感じられません。黙々と進み14時過ぎに登山道から右手へ下った手小屋沢避難小屋で写真撮影。その数分前にバックパックもトレッキングポールも持たない女性が追随、聞けば、バックパックを共有していた配偶者とはぐれ給水ポイントを探しながら下山するといいます。避難小屋周辺は水場ではありますが、湧き水という感じではないので、持っていたPB伊右衛門を半分弱分け与えることに。脱水は非常に危険なので、汗かきの自分は長丁場のこの日に限ってPB4本に追加で中型水筒(氷入り500ml)を携行していました。ザックはその分重たくなるわけですが、そのお蔭で少しは人のお役に立てました。体重の2%相当の水分(60kgの体重なら1200ml)を失うと、脳の機能に加え運動能力も低下するそうです。

登山に必要な水分量=発汗量ですから概ね、次の計算式が成立します。

体重(kg) X 行動時間 X 5(ml) = 必要水分量

休憩時間も含め下山まで要した時間は8時間40分、総じてなかなかタフな山行でした。

行動食原論:イチオシはとらやの「小形羊羹」!

2週連続の山行は初めての経験。おいおい撮り溜めた写真をアップしていきたいと思います。山行に欠かせないのは、云うまでもなく目指す山の特徴とコースの隅々を事前に頭に叩き込んでおいた上で、必要な装備を再確認しておくこと。

もうひとつは食料の調達です。最近は夜明け前に登山を開始して昼前には下山するので、早朝にパンや牛乳を摂れば昼食は必ずしも必要ありません。おにぎり1つあれば足りるケースもあります。中級以上の山となると山頂直前の所謂<胸突き八丁>で、短い休憩方々、行動食でエネルギーを補給しておいた方がいいことに気づきました。

ヤマケイの『萩原編集長の山塾 実践!登山入門』(2018年6月刊)を読むと、野球のピッチャーに準え、軽くて食べやすくすぐエネルギーに変わるものとして次のような行動食が紹介されています。

先発:おにぎり・パン・どら焼・ビスケット

中継:煎餅・ナッツ系・エナジーバー・ドライフルーツ

抑え:ゼリー飲料・非常食系(コンデンスミルク等)

勿論、異論はありません。ただ、食べ物だけに好みは岐れるかと思います。個人的には食べて口が渇くような行動食は避けることにしています。貴重なPBを無駄に費消したくないからです。従って、ビスケットや煎餅はNGです。何といっても最強一番手は森永製菓の「inゼリー」です。最近は提携関係にある米ウィダー社の冠が外れ、「ウィダーinゼリー」ではなく森永自社ブランドを強調しています。「10秒チャージ、2時間キープ」のコピーは秀逸でした。先ず目を引くのがスパウト付きアルミパウチというパッケージ。実にオシャレです。加えて、エネルギー、マルチビタミンマルチミネラルと種類が豊富で短時間で摂取できる点を高く評価しています。初期投資として一定の装備さえ調えれば、山登りは財布に優しいスポーツです。その分、自分は少し高価でも「inゼリー」は常備します。

前振りが長くなりましたが、最近、試してみてゼリー飲料と並ぶイシオシだと思ったのはとらやの「小形羊羹」です。贈答品として貰ったことがあって以前から存在は知ってはいたのですが、自分で買うのは初めてです。勝手に<とらやのミニ羊羹>と呼んでいたのですが、正式商品名は「小形羊羹」です。風味の異なる5種類が市販されていて、好みは定番「夜の梅」と西表島産黒砂糖を使用した「おもかげ」(各税込292円)です。賞味期限は1年、重量風袋込で55g(正味50g)、カロリーは150kcal弱、具材にも依りますがおにぎり1個とほぼ同値です。化粧箱を外した透明のフィルムで包んだ登山羊羹を発売すれば、意外なヒット商品になるのかも知れません。

先日、「世界ふしぎ発見」にミステリーハンターとして登場したニュージーランド留学中の野口絵子さん(16)(父は登山家野口健氏)も、登山前のエネルギーチャージとしてとらやの「小形羊羹」を推奨していました。野口親娘もあらゆる羊羹を食べ尽してとらやにたどり着いたと言いますから、自分の見立ても強ち間違いではなさそうです。

ちなみにファンシーな化粧箱に収まった羊羹の方は「イスパハン」。ピエール・エルメ・パリの代表的フレーバーを生かしたとらやパリ店40周年記念商品だそうです。

最高傑作:最新CM 「サントリー天然水」 X 宇多田ヒカル X 国木田独歩

TV番組は専らタイムシフトで視聴することにしています。CM時間帯を「スキップ=CM飛ばし」できればかなりの時間の節約になるからです。ところが、時々、飛ばすのが勿体ないような秀逸なCMに出喰わすことがあります。そんなときは繰り返し再生して楽しむことにしています。

なかでも、宇多田ヒカルさんが登場する「サントリー天然水」の一連のCMは記憶に残る傑作ではないでしょうか。僅か60 秒にこれほど大自然の魅力を凝縮させたCMを他に知りません。宇多田ヒカルさんの楽曲が美しい映像と見事にシンクロして恰も芸術作品の如しです。

第1作 2016年9月「水の山行ってきた 南アルプス」篇(ロケ地:栗沢山とアサヨ峰)(挿入曲:「道」)

第2作 2017年6月「水の山行ってきた 奥大山」篇 (ロケ地:鳥取県日野郡江府町)(挿入曲:「大空で抱きしめて」)

最新作 2020年4月「光も風もいただきます」篇(ロケ地:甲斐駒ケ岳?)(挿入曲:「誰にも言わない」)

最新作は、見晴らしのいい山中で焚き火で暖をとる宇多田ヒカルさんが詩を朗読するシーンから始まります。オレンジ色のひとり用テントを背にして、彼女はキャンプチェアに腰を下ろしています。テント泊の黄昏どきならこうありたいと思わせる心憎いまでの演出です。焚き火の灯りで文庫本の頁がアップになるシーンなんて俗世の塵埃に塗れた身も心も癒してくれそうです。クモの巣に垂れる朝露、氷柱から零れ落ちる水滴・・・その一滴一滴が渓流に導かれていきます。巨大な滝壺で水しぶきを浴びながら、宇多田ヒカルさんはペットボトルの「サントリー天然水」を口にします。

<月光をして汝の逍遙を照らさしめ、山谷の風をしてほしいままに汝を吹かしめよ>

朗読されるのは、国木田独歩の「小春」(所収:『武蔵野』岩波文庫)という作品に登場するワーズワース詩集の一篇です。独歩は作中でウォーズウォルスと記してしますが、英の代表的ロマン派詩人ウイリアムワーズワースのことです。<月光をして・・・>の下りの前段にも胸に響く一節があります。

<そもそもまたかく祈る所以の者は、自然は決して彼を愛せし者に背(そむ)かざりしをわれ知ればなり。われらの生涯を通じて歓喜より歓喜へと導くは彼の特権なるを知ればなり。彼より享くる所の静と、美と、高の感化は、世の毒舌、妄断(もうだん)、嘲罵、軽蔑をしてわれらを犯さしめず、われらの楽しき信仰を擾(みだ)るなからしむるを知ればなり。>

JR三鷹駅北口に<山林に自由存す>と刻まれた国木田独歩の詩碑(昭和26年3月設置・武者小路実篤筆)があります。宇多田ヒカルさんは最新作のCMで制作チームが用意した詩集ではなく、自身の楽曲「誰にも言わない」の世界観と重なる詩を読みたいと提案、先の詩篇を選んだのだそうです。宇多田さんの瑞々しい感性にただただ脱帽です。締めくくりに、国木田独歩が『抒情詩』に発表した「独歩吟」に収録された<山林に自由存す>全文をご紹介しておきます。

山林に自由存す
われ此句を吟じて血の湧くを覚ゆ
嗚呼山林に自由存す
いかなればわれ山林を見捨てし

あくがれて虚栄の途にのぼりしより
十年の月日塵のうちに過ぎぬ
ふりさけ見れば自由の里は
すでに雲山千里の外にある心地す

眦を決して天外を望めば
をちかたの高嶺の朝日影
嗚呼山林に自由存す
われ此句を吟じて血の湧くを覚ゆ

なつかしきわが故郷は何処ぞや
彼処にわれは山林の児なりき
顧みれば千里江山
自由の郷は雲底に没せんとす

映画『コクリコ坂から』と「国際信号旗」のメッセージ

渋谷から東急東横線経由で終点元町・中華街駅まで特急で37分。例年なら、年に数度は訪れるヨコハマの「港の見える丘公園」、「神奈川近代文学館」、「アメリカ山公園」・・・いずれもコロナ禍でお預け状態です。

夏休み恒例の日テレ「金曜ロードショー!」で、久しぶりに『コクリコ坂から』を視聴しました。映画の舞台は東京オリンピック直前1963年の横浜です。港町横浜といえば、真っ先に思い浮かぶのは「大さん橋(正式名称は横浜港大さん橋国際客船ターミナル)」に停泊する大型客船。満船飾の飛鳥IIや外国船と遭遇するチャンスもあるので、横浜を訪ねたら「大さん橋」は見逃せません。

映画の重要なモチーフになっている「国際信号旗」のメッセージについておさらいしておきたいと思います。主人公の松崎海(フランス語の海"la mer"に因んで作中メルと呼ばれています)が庭で掲げる国際信号旗(UW旗)が「港の見える丘公園」の一角にたなびいています。去年11月上旬に現地で撮影した写真をアップしておきます。

DとXを組み合わせた「二字信号」のメッセージは「当船は沈没しようとしている」、転じて「あなたに溺れてしまいそう」という符牒になっているそうです。機知に富んだメッセージだけにここぞという場面で使えそうですね。

国際信号旗」は、アルファベットの文字旗26枚、数字旗10枚、代表旗3枚、回答旗1枚の計40枚で構成されます。万国共通のアルファベットの旗1枚(「一字信号」)を掲げておけば、当該船舶の置かれている状況がひと目で分かるようになっています。即ち、旗にはアルファベットではなく、遠くからでも明認しやすいようにアルファベット一文字ごとに異なったデザインがあしらわれています。

毎日、メルが高台にあるコクリコ荘で掲げるのはUとWの旗。この2つのアルファベットがUWの順で組み合わされると、「ご安航を祈る(I wish you a pleasant voyage)」という「二字信号」のメッセージになります。メルと親しくなる前から俊は高台に上がるUW旗に気づいていて、父が操船するタグボートから「回答旗」を掲げていました。朝鮮戦争に巻き込まれて父が亡くなったあともメルが信号旗の掲揚を欠かさないのは何故でしょうか。いろいろな解釈が成り立ちそうですが、信号旗を介した父との対話を絶やさないことがメルの大切な日課なのだと理解しています。「清涼荘(カルチェラタン)」の取壊しに反対する新聞部長俊ら仲間たちの旧き建物への愛着も、メルの亡父への切ない思いと重なります。ラストシーンでメルが旗を上げるとき、それまでと違ってしっかりと上を向いていたことが印象的でした。

映画が公開されたのは東日本大震災の年の7月16日でした。挿入歌のひとつ「上を向いて歩こう」(坂本九さんの歌声)に励まされた人も多かったのではないでしょうか。

ザ・ノースフェイスのバックパック・ボストーク(30ℓ)は使い勝手がいい!~参考情報:30ℓバックパック比較~

これまで日帰り山行で使っていたのは、モンベル社の<ガレナパック30ℓ>。同じサイズの海外メーカー製バックパックと比べると、モンベル社の製品は機能性において遜色なく良心的な価格設定になっています。そのため、山頂で<かぶる>ことも多々あります。少しくたびれてきた<ガレナパック30ℓ>にはそろそろ引退してもらうことにしましょう。

選んだのは、フラッグブルーの<ボストーク30ℓ>(Vostok NM71959 FG)。決め手を列挙しておきます。

◎ 背負い心地のよさそうなパッド入りのエアメッシュバックパネル
 →長時間背負っていても負荷が掛かりません。
◎ウイング付きの収納式ウエストベルト
 →腰回りへのフィット感が抜群です。
◎フロントパネルに使いやすい縦型ジッパー付きポケット
 →地図や予定表の収納取り出しに大変便利です

本体はセール対象でしたが、レインカバーは別売なので追加で購入する必要があります。難点はレインカバー別売とマチが17センチと少し窮屈な点くらいです。

芳ヶ平湿地群トレッキングは5時間余り、その間の背負い心地は快適そのものでした。ご参考までに、代表的な海外メーカーの同サイズバックパックをスペックと共にご紹介しておきます。

米ザ・ノースフェイス社:ボストーク(830g)(51X30X17)(16500円)

米グレゴリー社:コンパス30(760g)(51X34X20)(16500円)

瑞ホグロフス社:VINA30(1090g)(58X33X31)(22000円)

仏ミレー社:ミレークーラー30(860g)(51X29X19)(13969円)

日本国道最高地点(R292)(標高2172m)は絶景ポイント!

芳ヶ平半日トレッキングを切り上げ、国道292号志賀草津高原ルートを走り国道最高地点(渋峠)を目指しました。進行方向に草津白根山の猛々しい山肌を見ながら、勾配を徐々に切り上げ標高を稼いでいきます。自転車、オートバイ、オープンカーの乗り入れ禁止という標識を頻繁に目にするようになると、殺生ゲート手前で係員に呼び止められました。現在、草津白根山の噴火警戒レベルは火口周辺規制のレベル2。火山活動が活発になっているせいで、周囲は火山性ガスが充満しているため、駐停車したり車外に出ないように係員がドライバーに注意を促しているというわけです。

群馬県側の殺生ゲートから万座三差路ゲート間は、午後5:00から翌日午前8:00まで夜間通行止めなので要注意です。ウインドウを閉め切っていても硫黄ガスが鼻孔を刺激します。チャツボミゴケ公園から40分ほど走ると、国道最高地点(2172m)に到達しました。駐車スペースが限られているので、ハイシーズンは渋滞必至でしょう。幸い、一台出たところへ滑り込ませることができました。写真のような立派な標識前は、記念撮影の行列ができています。ここからの眺望は素晴らしいのひと言です。

右手に裏白根、眼下に芳ヶ平湿地群の池塘まではっきり捉えることができます。条件が整えば右手に富士山が見えるそうです。真正面には榛名山系と赤城山系の峰々が連なり、左手へ皇海山男体山至仏山、燧ケ岳と大パノラマが拡がります。冬季は閉鎖されてしまうので、夏場だけの絶景ポイントということになります。2000m超の国道最高地点ですから、早朝、雲海を眺めることもできそうです。

【徹底ガイド】芳ヶ平湿地群半日トレッキング

お盆休みは奥草津へ遠征、半日トレッキングを楽しんできました。めざす目的地は芳ヶ平湿地群、起点は9:00開門のチャツボミゴケ公園になります。都内自宅から関越自動車経由で3時間(距離180km)ほどかかります。渋川伊香保ICでアウト、R145号八ツ場バイパスを進みます。途中、道の駅「八ツ場ふるさと館」に休憩方々立ち寄ると、足湯があったりご当地長野原の名所丸岩城(まるいわ)や不動大橋を望めたりと思わぬ旅の副産物と出会えました。奥草津へと向かう一般道も景色抜群でドライブ冥利に尽きます。

芳ヶ平(よしがだいら)湿地群は、群馬県北西部に位置し、中之条町草津町に跨っています。草津白根山の火山活動の影響で形成された湿地帯で2015年8月にラムサール条約に登録されています。受付開始の9:00前にゲートで車を待機させ、開門と同時に駐車場へと進み、受付で入園料(600円)を支払います。そこからマイクロバスに乗り換えてチャツボミゴケ公園へ移動します。聞き慣れないチャツボミゴケ(茶蕾苔)とは、強酸性の温泉水の流れる場所で育つ大変珍しいコケで、「穴地獄」(写真下)が最大の群生地だそうです。国内で他に見られる場所は熊本県阿蘇だけです。

「穴地獄」(1250m)は10分足らずで一周できてしまいます。殆どの来園者は勿体ないことにここで観光終了のようです。トレッキング希望者は、受付で必ず周辺参考案内図を貰いましょう。さて、右手の林道からいよいよトレッキング開始です。左手へ15分ほど進むと「渋峠・芳ヶ平・大平湿原登山口」と書かれた立派な標識があってこちらからもアプローチできますが、時計と逆回りの方が効率的で下山が楽だと思います。「穴地獄」を起点に3つの池を通過し、八石山展望台でピークハント(ここからの眺望は見逃せません)、大平湿原(おおだいらしつげん)へと歩を進めます。標準CTは以下のとおりです。

穴地獄~水池(20分)

水池~大池(20分)

大池~平兵衛池(25分)

平兵衛池~八石山展望台(1590m)~大平湿原(40分)

大平湿原~芳ヶ平湿原(60分)

芳ヶ平湿原まで片道2時間45分。芳ヶ平ヒュッテまでトイレや水場が一切ないので要注意です。往復すれば5時間前後はかかりますから、9時開門と同時に入園しないと、マイクロバス最終の16:30までに戻ってくるのは難しいと思います。往路、すれ違ったのはわずか3組でした。高層湿原の尾瀬と比べると規模は1/10強、知名度が低いので入山者も少なく穴場ではないでしょうか。植生も豊かで尾瀬の400種類には及びませんが、四季折々180種類ほどの植物や県天然記念物のミヤマモンキチョウに出会えます。今回、足元を動き回る小さなカエルや大きなヒキガエルのほか、何種類ものトンボを見かけました。一部、写真でご紹介しておきます。

帰路は「穴地獄の頭」を通過するコースで一気に下山、登山口に戻ってきました。次回は芳ヶ平湿原や裏白根を一望できる日本国道最高地点について触れるつもりです。