西武鉄道・新型特急「Laview(ラビュー)」で行く秩父の名峰・武甲山

毎年2月初旬、寒中に甘い香りを漂わせる小さくて可憐な蠟梅の花を愛でに宝登山(497m)を訪れます。天気さえ良ければ、写真(下)のように、山頂から秩父盆地を挟んで秩父山系武甲山(1304m)を一望できます。「河成段丘」と呼ばれる秩父の階段状の街並みは、大地の隆起を伴う荒川の流れによって長い時間をかけて形成されたものです。


2023年2月5日撮影

普段なら都内から90km足らずの武甲山登山口までクルマで向かうところですが、今回は西武鉄道が5年前に運行開始した特急ラビューに所沢駅から乗車して、横瀬駅まで1時間足らずの電車の旅(飯能駅で電車の進行方向が変わります)を楽しむことにしました。先頭車の丸い先頭形状(写真・下)と大きな窓が特徴の特急ラビューのデザインを手掛けたのは、世界的建築家にしてプリッカー賞受賞者の妹島和世さんです。外観にはもうひとつ大きな工夫があります。昨年、テレ東の「新美の巨人たち」で放送された<妹島和世西武鉄道・特急Laview」×田中卓志>が、新緑の映り込む車体を紹介していました。彼女自身がルーブル美術館ランス別館でアルミとガラスを用いて実現したように、車窓の景色をぼんやりと車体に投影して見せる試みがとても斬新なのです。メーカー日立製作所泣かせのデザインだったようですが、技術的なハードルも見事にクリアした上、2019年度のブリ―リボン賞を受賞しています。ラビューの人気ぶりは歴然で、乗車した5月3日は池袋始発便以外は上り・下り共に満席でした。


1号車のブルーリボン賞掲示

快適な特急電車の旅とは対照的に、下車後にはひたすら辛抱の徒歩約1時間半が待っていました。横瀬(よこぜ)駅から登山口のある一ノ鳥居駐車場まで、生川に沿って緩やかな傾斜の道路脇を歩きます。西武鉄道がネット上で公開している「秩父の名峰・武甲山山頂への道」をプリントアウトして携行すると便利です。路側帯のない場所も多いので通行するクルマに要注意です。幸い快晴で、前半は進行方向右手に武甲山の北側斜面を眺めながら歩きますので、退屈することがありません。武甲山の大きく抉り取られた斜面を見ると石灰岩を掘り尽くしたかに見えますが、「武甲鉱業」、「秩父石灰工業」、「菱光石灰工業」と後半は次々と現役採掘工場が現れ、ひっきりなしに大型トラックが石灰の粉塵で真っ白になった道路を行き来します。マスク着用で通過した方がいい箇所もありました。横瀬駅から登山口まで歩く人はかなりの少数派です。登山口まで10台以上のタクシーに追い越され、内心、穏やかではいられませんでしたが、横瀬駅から歩いたお蔭で武甲山山容変化の歴史を肌身で感じることが出来たわけです。

一之鳥居のある登山口から山頂まで約2時間。狛犬ならぬ狛狼が出迎えてくれます。丁目石が目立つ場所に設置されているので、山頂(52丁目)までの大凡の時間を推し量ることができて便宜です。中間地点を少し過ぎた大杉広場で一服し、一気に山頂まで駆け上がりました。学生さんが5ℓX2 の水を担いで登ってきます。御嶽神社裏手の第一展望所からの眺望は最高、真北に榛名山赤城山を望めます。長年、宝登山から眺めるだけだった武甲山、想像していたより遥かに魅力溢れる山でした。

下山は橋立川に沿って秩父鉄道浦山口駅をめざします。電車を利用すれば、ピストンにはない楽しみを味わえます。渓流の音を聞きながら進むと、途中、滝をいくつも見かけましら。削り取られた山肌からは想像できないような森林浴にうってつけの下山路でした。浦山口駅の次の影森駅で乗換え、2つめの御花畑駅で下車、西武秩父駅まで徒歩で移動すれば、全行程終了です。復路のラビュー乗車は満席で叶いませんでしたが、停車中の雄姿が撮影出来て、忽ち上機嫌に!


武甲山背景のラビュー


2024年5月3日撮影

西武秩父駅へ移動すると、駅前ロータリーからはそそり立つ武甲山が間近に迫って見えます。蠟梅の咲く2月上旬は北斜面に残雪があって、石灰岩採掘に伴いて削り取られた山肌がペルーのマチュピチュのように見えなくもありません。次回は雲海に期待して秋に登ってみようと思います。