辻井伸行さんが挑んだ超難度のラフマニノフ:《ピアノ協奏曲第3番》

昨夜は、サントリーホール・大ホール(2006席)で辻井伸行さんのピアノ演奏会でした。去年もほぼ同じ時期に大ホールで辻井さんの演奏を聴いています。前半は辻井さんのソロでバッハの《フランス組曲》とショパンから4つの即興曲。前半のトリは《幻想即興曲》でした。曲の構成は複合三部形式で、A-B-A’-コーダになっています。速いパッセージAから一転、曲調は甘美なModerato cantabileに変わり、ゆったりとした主旋律が切ないほどの哀感を奏でます、そして再びAを繰り返し、速いパッセージのコーダを迎えます。ピアノを演奏する人なら誰しもチャレンジしたくなるショパンの名曲です。

後半は、マエストロ下野竜也さん率いる東京交響楽団との共演、辻井さんが挑んだのは超難度のラフマニノフの《ピアノ協奏曲第3番》ニ短調作品30。演奏直前、辻井さんは観客席に向かって自らマイクを握り「この作品は、45分ほどの演奏時間中ずっと弾き続けなければならないピアニスト泣かせの難曲なのです」と解説してくれました。《ピアノ協奏曲第2番》はよく耳にしますが、第3番をライブで聴くのは初めての経験です。

陣取った2階席LCブロックからはピアニストの運指が良く見えます。指揮者の姿が見えないはずなのに、オーケストラ・東京交響楽団との呼吸はぴったり。厚みのあるオーケストラの演奏と伍して、力強い鍵盤タッチを披露する辻井さんのエネルギッシュな姿に鳥肌が立ちました。時折り左右の手が交差し、高音域の鍵盤も縦横に駆使します。鍵盤に触れない束の間さえ首を休みなく左右に振って、オーケストラの演奏と共鳴されているようでした。

「音の宝石箱」と言われるサントリーホールで聴くピアノ・コンチェルトはこの日も格別でした。