とっておきアフタヌーンVol.11はロシアを代表する作家曲の作品3曲

サントリーホール大ホールの昼公演に足をはこびました。開場は12:50、開演は13:30から。アークヒルズでお弁当を買って、アーク・カラヤン広場のテーブルでクイックランチしました。周りにはサラリーマンやOLのグループがランチを楽しんでいます。しばらくすると、開場を告げるパイプオルゴールが鳴り始めました。30年以上前に、こんな素敵なアート空間を都心に創造したサントリーと森ビルのセンスは大したものです。

「とっておきのアフタヌーン」とは、子育てなどで出かけづらい30代以上の女性をターゲットにした日本フィル&サントリーホール主催の平日昼公演のネーミングで、2015年にスタートしたそうです。ナビゲーターがマエストロにインタビューしたり、曲目の紹介をしたりと趣向に富んだ内容で、クラシックのコンサートにありがちな堅苦しさがありません。日本フィルを指揮するのは、ブザンソン国際指揮者コンクール優勝歴を有する沼尻竜典さん。11回目のこの日の演目は、ロシアを代表する作曲家、プロコフィエフチャイコフスキー、そしてストラヴィンスキーの3作品でした。

バレエ音楽の「ロメオとジュリエット」に続いて、この日、サントリーホールデビューを飾るという14歳の鳥羽咲音(とばさくら)さんのチェロ演奏が目玉でした。曲目は「ロココ風の主題による変奏曲 イ長調 作品33」。チャイコフスキーが生涯に作曲したチェロ曲はわずかに2曲ですが、この作品は聞き覚えがありました。技術的にも難しいとされるこの曲を実に堂々と演奏され、フィルとの呼吸もぴったりでした。上野の東京文化会館に代わって、今や、サントリーホールデビューが新人音楽家にとっての檜舞台なのですね。万雷の拍手のなか再登場した咲音(さくら)さんは、アンコールにプロコフィエフピアノ曲「マーチ」を力強く独奏、14歳とはとて思えない大器の片鱗を披露してくれました。

インタミッションを挟んで、最後の演奏曲はストラヴィンスキーの「春の祭典」。ー「ペトルーシュカ」、「火の鳥」と共に、ストラヴィンスキーの三大バレエ曲のひとつですね。打楽器が勇ましく奏でられ、恰も地響きの如し。生贄を神に捧げるという儀式のための曲目と聞けば納得です。演奏中、若き日の冨田勲さんが惹かれたというエピソードを思いだしました。いつか、バレエと一緒に聴いてみたいものです。

サントリーホール大ホールのこんなエレガントなコンサート、客席の入りは60%くらいだったでしょうか。敷居が高いと思われがちなクラシックコンサートが、こうした取組みを通じてもっと身近になればいいのにと願います。