クリスマスが近づくと決まってテレビ放送される映画があります。今夜の金曜ロードショーは案の定『ホーム・アローン2』。この時期、子どものいる家庭には笑って泣ける『ホーム・アローン』や『ホーム・アローン2』がうってつけなのでしょう。最近はめったに地上波放送されなくなりましたが、『ホーム・アローン』と同じ1990年にリリースされた『ダイ・ハード2』のエンディングも記憶に残るワンシーンです。
数あるクリスマス映画のなかでマイベスト・ムービーは、名匠フランク・キャプラ監督の『素晴らしき哉、人生!』("It's a Wonderful Life")です。 米国公開は第二次世界大戦直後の1946年、日本公開はそれから8年後の1954年です。12月22日にNHKBSプレミアムで放映されたくらいですから、古い映画でありながら根強い人気に支えられているに違いありません。公開当時、興行的に失敗したと伝えられていますが、鑑賞すれば見方が一変すること請け合いです。白黒映画でありながら少しも古さを感じさせない本作品は、不朽の名作としてクリスマスシーズンが訪れる度に全米でTV放映されるのだそうです。
心優しい家族思いのジョージは、いつも周囲の人々を気遣い自分のことは後回しです。不自由なジョージの左耳は、幼い頃に弟ハリーを冷たい池から救出したとき受傷したものです。父親が急逝したため、ジョージは世界へ雄飛する夢はおろか大学進学さえ断念して父親の営む住宅金融会社を継承します。夢を断たれ失意のジョージの前に進学先のNYから舞い戻ったメアリーが現れ、やがてふたりは結ばれます。4人の子供に恵まれ、ジョージは貧しいながら幸せな暮らしを送っていました。ところが、ジョージの住むニューヨーク州ベッドフォールズという小さな町にはポッターという金儲けに長けた大富豪が君臨し、住宅金融会社を軌道に乗せて人々に慕われるジョージを目の敵にしています。
第二次世界大戦が終わり、弟ハリーは海軍の英雄パイロットとして名誉勲章を受章、故郷に凱旋します。一方、クリスマスイヴの日に叔父が会社の資金8000ドルを預金先の銀行で紛失(実はポッターの悪巧み)したため、ジョージは窮地に立たされます。自暴自棄になったジョージは自殺して保険金ですべてを清算しようと考えます。そこへ現れたのは、翼のない二級天使・クラレンス。クラレンスの企みで思わぬ体験をすることになったジョージは、捨てようとしたはずの人生をもう一度やり直そうと決心します。
経済的な豊かさと引き換えに資本主義社会が見失った大切な価値観を思い起こさせてくれる珠玉の映画ではないでしょうか。天使クラリスが肌身離さず持ち歩いていた『トムソーヤの冒険』の裏表紙に書き残したメッセージにすべてが詰まっています。
Dear George, Remember no man is a failure who has friends. Thanks for the wings! Love Clarence
<親愛なるジョージへ 友のいる敗者なんていないってことを忘れないで欲しい。翼をありがとう! 愛を込めて クラレンスより>