サントリーホールの冬の風物詩|BCJの「聖夜のメサイア」(2022)

バッハ・コレギウム・ジャパンBCJ)は、2001年以降毎年、サントリーホールでクリスマスコンサートを開催し今年で22回を数えます。自身、聖夜にサントリーホールに足を運ぶのは3回目になります。

今年は3年ぶりに客演が復活。客席の9割方は埋まっていて16:00の開演前から熱の迸りを感じました。2015年からバージョンは<ソリスト4人の稿 (1753年)>で一貫しています。指揮者・鈴木雅明さんは「声楽ソロの各パートにひとりの独唱者を割り当てることが一番バランスが良 いと思ったからだ」と理由を述べておられます。

オラトリオ『メサイア』は、1742年にアイルランド・ダブリンの劇場で初演されました。翌年のロンドン公演で英国王ジョージ2世が「ハレルヤ・コーラス」に感激しスタンディング・オべーションしたと伝えられています。『メサイア』は、アリア、二重唱、合唱、レチタティーボを交互させながら進行する音楽形式を採用し、イエス・キリストの生涯を分かりやすく再構成していきます。作曲者・ヘンデルは40代で英国に帰化します。歌詞が英語なのは活動の舞台が英国だったからです。友人チャールズ・ジェネンズから手渡された台本に感激したヘンデルは、3週間あまりで『メサイア』全曲を完成させてしまいます。ヘンデル56歳の夏でした。

メサイア』を聴くたびに新しい発見があって、今回も鳥肌が立つような感動を味わいました。透明感溢れる伸びのある歌声で聴衆を魅了したソプラノのハナ・ブラシコヴァさん、力強い低音が魅力のバス・大西宇宙さん、歓喜が押し寄せるような「ハレルヤ・コーラス」、『メサイア』のもうひとつの代名詞・トランペットの重奏・・・ジグソーパズルのピースを次々と嵌め込むように、マエストロ・鈴木雅明さんのエネルギッシュで緻密な指揮で完成度の高い作品世界が紡がれていきます。

アンコールは讃美歌103番『牧人ひつじを("The First Noel")』。清澄なアカペラがサントリーホールに響き渡り心が洗われたような気がしました。

聖夜にBCJの『メサイア』を聴く、こんな最高の贅沢をほかに知りません。

参考情報:2022/12/30(23:59)までPIA LIVE STREAMでリピート配信中です(視聴料:2000円)