文春砲に続き週刊新潮が香川照之の高級クラブ（銀座）における乱行を報じたことによって、今後のタレント生命に赤信号が灯り始めました。香川さんをCMに起用するトヨタをはじめとする複数の有力企業は次々と契約を更新しない方針を打ち出し、MCに抜擢されたばかりのTBS情報番組からの降板も明らかになりました。
ネットで囁かれているように、3年前の密室での乱行が今頃になって叩かれるのは些か奇異な印象を受けます。被害者のホステスが訴えたのはあくまで銀座クラブのママです。しかも示談になっていますから、仮に訴外の香川さんが示談金を払ったにせよ、解決済みの出来事です。蒸し返しに近い今回の暴露報道は、好感度抜群の香川さんの評判を失墜させるには十分過ぎるものでした。香川さんが支払うことになる代償は計り知れません。タレントに限った話ではありませんが、メディアへの露出度が高くなればなるほど、雑誌メディアに狙われやすくなります。周囲の妬みや嫉みの対象にもなるでしょう。スキャンダルが発覚すれば命取りになりかねません。過去を封印することは容易ではなかったようです。頭脳明晰な香川さんにしては、あまりにお粗末な後始末に思えてなりません。
2011年9月に香川さんは九代目市川中車を襲名し40代で梨園入りします。実父は二代目市川猿翁ですから血統は一流です。爾来、前代未聞の歌舞伎役者とタレントの二足の草鞋を履きつつ八面六臂の活躍されているのは衆目の一致するところです。NHKスペシャルドラマ『坂の上の雲』の正岡子規役、TBSドラマ『半沢直樹』の大和田常務役、映画『剱岳 点の記』の宇治長次郎役などなど、記憶に残る名演技は枚挙に暇がありません。
昭和の時代、＜女遊びは芸の肥やし＞という風潮が色濃く残っていたように思います。元々は歌舞伎の女形が女性の仕草を真似るために盛んに女遊びをしたことに由来します。それが、いつの間にか、芸能人が浮気を繰り返すことを正当化するために使われるようになりました。かつて、石田純一が漏らした「文化や芸術といったものが不倫という恋愛から生まれることもある」がメディアによって「不倫は文化」と誤って伝えられ、彼は世間から袋叩きに遭いました。令和の今日、＜女遊びは芸の肥やし＞などと言い放とうものなら即アウトです。どうやら、世の中には聖人君子しかいないようです。スキャンダル発覚に伴う昨今の人物評の手のひら返しは、ネット拡散も手伝って止まるところを知りません。香川さんの場合、風俗店の酒席における乱行ですから、もう少し大目に見てあげてもいいのではないでしょうか。名跡や血統がモノを云う梨園にあって、新参者の中車さんは相当な精神的ストレスを抱えていたのではないでしょうか。タレントにかぎらず、誰にでも多かれ少なかれ裏の顔はあるものです。一定期間の謹慎はやむを得ないとしても、今回の騒動で香川さんのタレント生命まで奪ってしまうのは如何にも惜しいと思うのです。
