鯛焼きの「天然もの」 VS 「養殖もの」

不思議なもので9月に入るとめっきり秋めいてきます。夏場はキンキンに冷やした缶ビールや清涼飲料水ばかり口にしてきましたが、先週あたりから、温かいほうじ茶や紅茶が恋しくなってきました。

食欲の秋を迎え、普段着のおやつに是非とも供したいのが出来立ての鯛焼きです。お隣の吉祥寺駅北口商店街には鯛焼き屋さんが軒を連ねています。一番贔屓にしているのがハモニカ横丁にある「天音(あまね)」です。「天音」名物・羽根付き鯛焼きは、皮が厚くボリュームたっぷりで北海道産小豆を使った餡が絶品です。秋・冬ともなれば、長蛇の行列必至の人気店です。

吉祥寺駅北口にひときわ大きな看板が目をひく「鳴門鯛焼本舗」があります。看板の下には赤地の背景に金文字で「天然鯛焼」と書かれています。鯛焼きに「天然」も「養殖」もなかろうと思っている方、認識不足ですよ。両者の違いはズバリ金型にあります。「養殖もの」の場合、大型の金型に生地を注ぎ、反対側には餡子をのせて、一度に10匹前後を焼き上げます。「天然鯛焼き(天然もの)」の場合、金型に収まるのはたった1匹ですから、なにしろ手間と時間がかかります。「一丁焼き」とも呼ばれます。「養殖もの」を悪く言うつもりはありませんが、「天然もの」には熟練の職人さんの技が欠かせません。

「鳴門鯛焼本舗」からほど近い場所に店を構える「横浜くりこ庵」は、写真のように、一度にたくさんの鯛焼きを焼き上げます。定番の餡子だけではなく、ごまあんやクリームなど、変わり種の鯛焼きを何種類も用意しています。試したことがないので、味や食感に関するコメントは差し控えますが、モダンな鯛焼きではないでしょうか。

「天音」の厨房内部は外から覗けないので想像するしかありませんが、羽根付きですから、「天然もの」ではなかろうかと思っています。東京鯛焼き御三家の筆頭・麻布十番の「浪花家総本店」は「一丁焼き」の金型を使って丁寧に焼き上げます(写真上)。しばらくご無沙汰している老舗「浪花家総本店」の「天然もの」が無性に食べたい気分です。