歌舞伎レビュー:2019年8月納涼歌舞伎「東海道中膝栗毛」

歌舞伎座通いは、ある意味、しんどい部分があります。というのも幕間も含めれば4時間余りの長時間、必ずしも快適とは言い難い座席に座って鑑賞しなくてはならないからです。知らない演目だったりすると、あらかじめ筋書きを読み込んで、舞台に集中しなければならないので、体調が万全でないと満足な鑑賞はできません。8月は納涼歌舞伎で三部制、登山や車での京都往復で少々夏バテ気味だったので、抱腹絶倒の舞台に期待して第二部の「東海道中膝栗毛」の2等席を手配しておきました。

1等席と隔てる通路を前にした1階2等席一列目だったので、足を延ばしたりしてリラックスして鑑賞できました。序幕は15:00~16:20、20分の幕間を挟んで、二幕が16:40~17:40と都合2時間40分でした。このくらいの鑑賞時間が塩梅がいいように思います。新幸四郎演じる弥次さんと猿之助演じる喜多さんの滑稽極まる掛け合いは、納涼歌舞伎にふさわしい舞台でした。2016年から始まった「東海道中膝栗毛」シリーズは、今年で4回目。これまでスルーしてきたので、今回が初めての観劇になります。冒頭に過去の印象的なシーンが引き幕に大写しにされ、弥次喜多がラスベガスへ飛ばされたり昇天したりと、実に奇想天外な展開だったことを知りました。毎回、十返舎一九の原作を下敷きに大胆に脚本が練られているに違いありません。

序幕で、テレビの世界から軸足を梨園へと移したカマキリ先生こと中車が登場すると万雷の拍手がお出迎え。中堅どころからベテランの域に差し掛かり、熱演に温かい拍手が目立ちました。一方、新染五郎市川團子(だんこ)の十代若手が役に嵌ったのびのびとしたで演技で会場を沸かせてくれました。ふたりの実父、新幸四郎市川中車との役を離れた親子さながらの掛け合いに会場は大いに盛り上がりました。シリーズを最初から見ている観客にはふたりの急成長が眩しく見えたに違いありません。背丈も親より高くなったように見えました。

今回はお伊勢参りという原点に立ち返る内容でしたが、弥次喜多のそっくりコンビ、トランプとプーチンが登場し、早替わりや宙乗りも織り交ぜ、最後まで大笑いさせてくれました。本シリーズは見逃せません。