超実写版「ライオン・キング」と「ジャングル大帝」の酷似

封切りされたばかりの超実写版「ライオン・キング」の吹替版を観てきました。アメリカ映画は通常字幕スーパーで実際の会話と字幕スーパーの端折り訳出を楽しむのですが、ドキュメンタリーフィルムのように美しいという前評判の高い「ライオン・キング」に字幕は煩いと思い、あえて吹替版を選択しました。サバンナの偉大な王ムファサの子シンバの声優は賀来賢人、兄ムファサの王座を虎視眈々と狙う弟・スカーを江口洋介がそれぞれ務めました。エンドロールで名前を確認するまで、まったく声優が誰だか分かりませんでした。今回は吹替版で正解でした。

本題に戻りましょう。実は小学生の頃(娯楽の少ない時代でした^^;)、手塚治の「ジャングル大帝」が大好きで、テレビの前にかじりついていた記憶が今も鮮明です。飼っていたシャム猫の名前もレオ(アニメの主人公)にしていたくらいです。超実写版「ライオン・キング」に先立って1994年に長編アニメーション映画「ライオン・キング」(32番目のディズニーアニメ)が公開された当時から、「ジャングル大帝」との類似性が指摘されていたそうですが・・・・先行映画を観ていない自分は超実写版を鑑賞しているうちに、両作品の酷似に気づき唖然としました。穏当な類似という形容は当たりません。一部のストーリーやキャラクターの設定に重複が散見されます。ディズニー側は終始いわゆるパクリを否定しているそうですが、「ジャングル大帝」ファンにとっては、看過できない点ばかりでした。

両作品の公開年

○「ジャングル大帝」カラー長編漫画映画(1966年・日本)

◎「キンバ・ザ・ホワイト・ライオン」(1966年・米国NBC TV放映)

◎「ライオン・キング」ディズニー劇場アニメ(1994年・米国)

◎ 超実写版「ライオン・キング」(2019年・米国)

公開年を振り返ると、「ライオン・キング」(1994年)制作にあたった中心的スタッフが幼い時分、NBC系列でTV放映されたアニメを見た可能性はかなり固いのではないかと推測できます。「ジャングル大帝」が30年近く前に制作され日米両国で話題作になったわけですから、「知らなかった」「観ていない」というコメントは受け容れ難いと云わざるを得ません。酷似している点を整理しながら列挙してみます。

・(尖端の突き出た岩場)動物世界を見下ろす尖端の突き出た岩場(「ライオン・キング」では「プライドロック」と呼ばれます)は共通

・(役割の似た後見役キャラクター)主人公レオの後見役に鳥(喋るオウム「ココ」 vs「ザズー」 )が登場する点

・(敵役の存在)両作品の敵役「ブブ」も「スカー」も子分にハイエナを引き連れている点・両者とも黒いたてがみを持ち相貌が似ている点

・(群れの長老的存在)群れの長老で祈祷師のマンドリル、「マンドリル御爺さん」と「ラフィキ」は瓜二つ

・(ヒロインが幼馴染)「ライヤ」も「ナラ」も幼馴染

 

このほかにも様々な類似点が指摘されています。ディズニーを敬愛する手塚治虫の気持ちを汲んで、手塚治虫プロダクションは事を荒立てず穏便に済ませたそうです。日本を代表する漫画家たちは、黙っておられず、抗議文をディズニーに送りつけたといいます。ディズニー側の木で鼻を括ったような対応には、今なお、首をかしげざるを得ません。訴訟国家の米国のことですから、争いになっても残念ながら日本側に勝ち目はないでしょう。ひと言、手塚作品への好意的言及があれば、誰しも納得したはずです。オリジナリティを重視する創作の世界にあって、ディズニー側のこうした対応は、将来に禍根を残したことだけは間違いなさそうです。