「韓流村」 VS 「カカクコム」気になる控訴審の行方

6月16日、焼肉チェーン店「韓流村」(店名は『KollaBo』)がグルメサイト「食べログ」を運営するカカクコム(2371)を相手どって独占禁止法違反だと訴えた裁判の判決が下されました。東京地裁は、「食べログ」のアルゴリズム運用に独占禁止法違反があったと認め、カカクコムに対し3840万円の損害賠償を命じています。カカクコムは判決は不当だとし、即日、東京高裁に控訴しました。勝訴した原告「韓流村」も地裁判決を肯定的に受け止めながらも、アルゴリズムの運用差し止めが認められなかったことを不服として控訴審で争う構えです。一流企業・カカクコムの顧問弁護士にしてみれば、零細飲食店の訴えに屈したままでは、プライドが許さないのでしょう。

事の発端は2019年5月21日に遡ります。突然、焼肉店『KollaBo』21店舗中19店舗の「食べログ」評点が、最大0.45、平均で0.17下落したのです。従業員の指摘を受けて、社長は同じタイミングで同業他社にも似たような評点下落があったことを探り当て、チェーン店の点数を一律に下げるアルゴリズム変更があったのではないかと推測、訴訟提起に及びます。

今や、Googleに代表されるデジタルプラットフォーマーDPF)は政府や自治体さえ制御不能な巨大な力を掌握しています。こうなると、司法が中立・公正な立場でDPFの暴走を牽制していくしかありません。昨年11月、EU司法裁判所が画期的な判決を下しています。Googleが自社ショッピングサイトを他社商品比較サイトよりも有利な位置に示したのは欧州競争法(日本の独占禁止法)違反だと認定したのです。EU司法裁判所はGoogleに対して邦貨換算3200億円の巨額賠償を命じました。

法律的に見て、本件は前例のない裁判です。デジタル社会の出現で生成した新しい争点ですから、参考にすべき判例もありません。おまけに、グルメサイトの巨人「食べログ」相手の訴訟提起です。先ず、独占禁止法違反を問う裁判を提起した社長の度胸と執念に敬服しないわけにはいきません。物損事故をめぐってやむなく損害賠償請求を起こした自身の経験からすれば、時間と金のかかる民事裁判(損害賠償請求)ははっきり言って不毛です。極論すれば、儲かるのは原告と被告の代理人弁護士だけです。

原告に圧倒的に不利な状況下、「韓流村」の社長が勝訴判決を勝ち取ってくれたお蔭でカカクコムの評点で一喜一憂する飲食店経営者に一条の光がもたらされたことは間違いありません。アルゴリズムを一方的に変更することが「優越的地位の濫用」を禁じた独占禁止法に違反するとした判旨は、先駆的かつ画期的です。しかし、一審判決はもう一歩踏み込んでも良かったはずです。やはり、アルゴリズムを評価対象者に一切開示しないのは不当な気がします。常に厳しい競争環境で凌ぎを削る飲食店を商材にして莫大な利益を上げるDPFには、厳しいルールを課すべきだと思うのです。控訴審ではどんな判断が下されるのでしょうか、注目していきたいと思っています。「韓流村」に同調して他の飲食店も原告に加わり集団訴訟にでも発展すれば、一層面白い展開になるかも知れません。

検索すれば必ず目にする「食べログ」評点が気にならないはずはありません。分かりやすい5段階評価ですから、3のお店より3.5のお店に行こうと思うのは人情です。しかし、自分の味覚を信じないで評点だけを拠り所に店の良し悪しを判断するのは「食べログ」教信者のすることです。何より重要なことは「食べログ」の評点を鵜呑みにしないで、自分自身の五感を駆使して判断することです。