夫婦同姓合憲判決要旨を読む

今月16日、「夫婦は同姓(民法750条)」、「女性は離婚して6か月間は再婚禁止(同733条1項)」とする民法規定が憲法に違反しないかどうかについて初の憲法判断が示されました。前者は合憲、後者は100日を超える期間について違憲という結論でした。

後者は最高裁判事15名一致の判断でしたが、夫婦同姓規定には5名(女性3名は全員)の判事が違憲判断していますので、合憲とする司法判断は将来覆される可能性も否定できません。

久しぶりに判決要旨に目を通してみましたが、旧態依然とした内容にがっかりさせられました。学生の時分、座右に置いて参照した判例百選の起承転結スタイルと些かも変わりがなかったからです。1985年を境にアフターゲイツ(AG)と呼ばれるネットワーク時代が始まり、今年で30年になります。インターネットが普及しライフスタイルが劇的に変容したことに対する何らかの言及があっても良さそうなのに、古色蒼然とした判決文からはそうした環境変化を斟酌した形跡が窺えません。

憲法13条との関係では「<姓の変更を強制されない自由>が憲法上の権利として保障される人格権の一部であるとはいえない」、14条との関係では、「わが国では夫の姓を選択する夫婦が圧倒的多数を占めるとしても、それが既定のあり方自体から生じた結果であるということはできない」と最高裁は断じています。憲法24条との関係についても、婚姻に関する当事者間の自由かつ平等な意思決定を制約するものではないといいます。

「夫婦同姓」合憲の最高裁の結論に自分としては異論はありませんが、「夫婦同姓は我が国の社会に定着してきたもので。夫婦同姓制は家族を構成する一員であることを対外的に示し、識別する機能をもっている」という点を、歴史的背景に触れ社会的意義に踏み込んで、しっかり論じて欲しかった。

人口減少が加速するなか、親から子へ、そして孫へと家族が繋がっていく過程において、同一姓が果たす役割は決して軽んじられるべきではないと思うわけです。山田昌弘中大教授は、夫婦別姓への反対は、つまるところ、社会の同調圧力だと主張しますが、説得力に疑問が残ります。今回の判決を契機に、家族で同一姓の功罪をあらためて議論してみたいと思っています。