年の瀬を詠んだ一句を思う

晦日を迎えました。今年を振り返ってみると、年初に掲げた目標をある程度消化できた一方で、痛恨の極みともいうべき出来事もあって悲喜こもごもの一年でした。人生はコインの表裏の如し。また、禍福糾える縄の如し。

先日、国立劇場東海道四谷怪談を観たとき、宝井其角が煤竹売りに身をやつした大高源吾と両国橋で出会ったときに詠んだ一句のことをふと思い出しました。

「年の瀬や水の流れと人の身は明日待たるるその宝船」

尾羽打ち枯らした弟子の大高源吾を両国橋で見かけて、師匠が一句読むと、源吾は謎解きのような付句を返して立ち去ります。ご存じのように、翌日、大高源吾は仇討ち本懐を成し遂げたのですから、其角は不明を恥じたに違いありません。この「両国橋の別れ」もコインの裏表に通じるお話ですね。