「火星移住計画」は現実味を帯びてきたのか?

最近、気になるニュースは宇宙に関する話題。昨年12月、ZOZO創業者前澤友作氏がロシアの宇宙船ソユーズに搭乗し、約6時間のフライトを経て国際宇宙ステーションISS)に到着、宇宙に12日間滞在して地球に帰還しました。宇宙に行った日本人は14人になるのだそうです。同乗したカメラマンの分も含めて前澤氏が支払った宇宙旅行の代金は100億と言われています。その数か月前には、米アマゾンの創業者ジェフ・ベゾスが自身が保有する宇宙開発企業「ブルー・オリジン」初の有人飛行に成功しています。

宇宙をめざす世界の富豪たちはさらに壮大なスケールのプロジェクトを構想しているようです。そのひとりがテスラ創業者でCEOのイーロン・マスク氏。数日前、そのマスク氏が米Twitter社を440億ドル(5兆7000億円)を投じて買収すると発表し、世界を驚かせたばかりです。2002年にマスク氏はSpace Exploration Technologies Corp(通称スペースX)を設立、現在、惑星間宇宙飛行を見据えた超大型ロケット/宇宙船スターシップを開発中です。スターシップは再利用可能なロケットで、火星移住計画を推進する役割を担うことになっています。1950年に出版されたレイ・ブラッドベリSF小説火星年代記』に描かれた火星への植民が少しずつ現実味を帯びてきているのでしょうか。そう考えるのは早計な気がします。が、マスク氏はやる気満々。火星と地球が最接近する2024年を野心的なターゲットとした上で、2026年までに火星までの有人飛行を成功させ、最終的に火星に恒久的基地を設け、人が暮らせるようにしたいのだそうです。スペースX社がめざす人類のミッションは、他の惑星に生命圏を拡げることなのです。

太陽系で距離的に地球に近い惑星は金星と火星。金星は二酸化炭素の厚い大気に覆われ、表面温度は400℃超。その上、地表の気圧が異常に高く、「スーパーローテーション」と呼ばれる秒速100mの突風が絶えず吹きつけるのだそうです。生き物が生存できる基盤そのものが存在しないので、金星はそもそも移住の対象にならないのです。

では、残された選択肢、火星は人の住めるような環境にあるのでしょうか。地球外の惑星において地球を形成することをテラフォーミング(「地球化」)と言います。転じて、人間も含めた生命体が生存できるようにすることを指したりします。現在の科学技術でテラフォーミングの可能性があるのは火星だけだそうです。直径は地球の半分程度、自転周期が24時間半、薄いながらも大気(地球の1%程度で96%は二酸化炭素)が存在し、四季もあります。かつて火星に存在した水の相当部分が永久凍土と化し地殻に閉じ込められているというのが最近の研究成果だそうです。

ここまで火星の実態が明らかになると、俄かに火星移住計画に期待したくなりますが、火星の現実はそんなに甘くはありません。火星の平均気温は-63℃、最低気温は-140℃に達します。さらに大きな懸念は重力が地球の1/3だという点。低重力がもたらす人体への影響は計測不能、長期的に見て健康的な生活を送れるのかどうか甚だ疑問です。克服すべき最大の課題は、太陽の周りを回りながら火星に近づくとすると、片道260日もかかる点です。その間の宇宙飛行士の生命維持に必要な食糧や燃料等の物資輸送を考えると、有人飛行というよりロボットによる探査の方が断然現実的に思えてきます。火星探査が片道切符と言われる所以です。

ここまで考察してくると、つくづく地球という星は人類に優しい惑星だということが分かります。地球温暖化も含め、地球環境をこれ以上悪化させないように、日常生活のなかで地球をいたわることに繋がる営みを心掛けたいと思います。