2022年テニス全豪オープン決勝戦(ラファエル・ナダル vs ダニル・メドベージェフ)が終了したのは、現地時間午前1時10分過ぎ(東京時間23時10分過ぎ)。試合時間が5時間24分に及ぶ大熱戦でした。4大大会通算20勝のレジェンド・ナダルに挑んだのはロシアの気鋭メドベージェフ。ナダルは昨年8月に慢性的な痛みを抱えていた左脚治療のため戦列を離れ、12月にはコロナに感染し発熱など重篤な症状が続いていたと伝えられました。対戦相手のメドベージェフは25歳の伸び盛り、しかも世界ランキングはジョコビッチに次ぐ2位ですから、ナダルにとって最も手強い相手が勝ち上がってきたわけです。ふたりの年齢差は10歳。接戦を期待しつつもナダルにとって厳しい試合になるのではと思っていました。
案の定、サービスエースでポイントを重ね、長いラリーに持ち込めば相手のミスを誘うメドベージェフが勢いづき、ナダルは立て続けに2セット(2-6・6-7)を失って窮地に立たされます。序盤からナダルの全身より大量の汗が滴り落ちるのを見て、多くの観客が疲労滲むナダルのストレート負けを意識したはずです。ところが、歴戦の勇者ナダルは決して諦めません。絶妙なドロップショットを織り交ぜ、前後左右にメドベージェフを揺さぶり始め、とうとう2セット連取(6-4・6-4)して最終セットに持ち込んだのです。こうなると、会場の声援はナダルへ大きく傾き、観客の態度に苛立つメドベージェフが自ら観客との間に壁を設けて孤立していったように感じました。
最終セットは、ブレイク、ブレイクバックとシーソーゲームになり、再びナダルにとって苦しい時間が訪れます。試合巧者メドベージェフも疲労が蓄積してきたのか、トレーナーに脚のマッサージを幾度もリクエストします。5-5に追いつかれた直後の第11ゲームでブレークバックし、流れを引き寄せたナダルが若き実力者を振り切りました。
ちょうど10年前、同じ全豪決勝で5時間53分という史上最長の死闘を演じたのはナダルとジョコビッチでした。その試合の敗者ナダルは、試合後、<最も幸せな負け>だと語って世界中のテニスファンを唸らせました。ナダルにとって13年ぶり2度目となる今年の全豪制覇は、間違いなく、2012年の死闘の延長線上にあったのです。一夜明けても興奮覚めやらず、<最も幸せな負け>が<キャリアでも忘れられない試合>に繋がる瞬間を見届けられた幸せに浸っています。
超一流選手としての品格、飽くなき闘争心、強靭な精神力、卓越した技術、鍛え上げられた肉体(特に丸太のような二の腕)・・・、これほどまでに心技体揃ったテニス選手はナダルを措いて他にはいません。試合後、「これが最後の全豪になるかとも思った。今後もプレーを続けて、全力を尽くす」と述べたナダル。4大大会単独最多優勝21回、ダブルグランドスラム制覇という輝かしい勲章が通過点であって欲しい、誰しもそう願っているはずです。今年の全仏で赤土の王者復活を見届けたい!