終息の兆しが見えないコロナ禍のせいで、クラシックコンサートや観劇の機会が激減しています。便利な都心に住み替えたいという欲求もかつてほどではなくなってきました。一方、ソーシャルディスタンスを気にせずアウトドアライフを気軽に楽しむという見地に立つと、自宅のある三鷹・吉祥寺周辺は奥多摩へのアクセスが抜群で、絶好の地理的ロケーションにあると言えます。息子たちが小学生の時分は専らニジマス釣り目当てで奥多摩へ出掛けたものです。今や、奥多摩では、フィッシングに加え、トレッキング・登山、キャンプ、カヤック・キャニオニングなど多様なアウトドアライフが楽しめますから、その魅力は絶大です。
奥多摩町は紛う方なき東京都の一部です。面積は東京都の市区町村で最大でありながら推計人口はわずか4774人(2021年4月1日現在)。大自然に惹かれて移住者も増えているようです。土日・祝日は「ホリデー快速おくたま(あきがわ)」(新宿発奥多摩行)が運行しており、東京駅出発(新宿乗換え)後、約2時間で奥多摩に着いてしまいます。中央線沿線に住んでいれば、さらに短時間で奥多摩の大自然にアプローチ可能なのです。
このGWは、別料金不要の「ホリデー快速あきがわ1号」(奥多摩駅着:8時21分)を利用して、2回奥多摩に出掛けました。トイレ車両も繋いでいて、家族連れや登山客で車内は結構な賑わいです。
①【大多摩ウォーキングトレイル】1回目は<大多摩ウォーキングトレイル>と呼ばれる約9kmのトレイルを歩きました。起点は青梅線の古里駅(こりえき)、終点は奥多摩駅になります。コース前半は川から距離をおいてトレイル最高地点「松の木尾根(380m)」ヘ向かうため、登山感覚を愉しみながらのハイキングとなります。この時期、藤の花が新緑と絶妙のコントラストでした。最大の見所は鳩ノ巣渓谷。マイナスイオンたっぷりの渓谷美は圧巻です。新緑に包まれた100メートルほど続く奇岩・巨岩に鳩ノ巣小橋を捉えた構図がベストビューポイントです。紅葉を迎える11月下旬に再訪したくなりました。後半、白丸ダムを過ぎると右手に色とりどりのカヤックが視界に入ってきます。やがて、青梅街道に出れば小一時間で奥多摩駅です。所要時間は3時間30分。
②【川苔山登山】2度目は奥多摩駅へ直行、西東京バスに乗り換え、川乗橋バス停を起点に「川苔山(かわのりやま)」(標高1363m)(注)をめざしました。30分ほどアスファルト舗装の林道を歩くと登山口(細倉橋)へ。バス停から1時間ちょっとで「百尋ノ滝」へ到着です。落差40mのこの瀑布はなかなかの迫力で「三ツ釜ノ滝」と並ぶ奥多摩の名所になります。ここからは意外にタフな道程でした。「川苔山」山頂まで1時間程度。立派な山頂標識があって、ゆとりのある山頂スペースで大勢の登山者がランチ休憩中でした。自分も都最高峰雲取山が望める山頂標識裏手に陣取って、お隣の夫婦が缶ビールで乾杯するのを横目に見ながら、おにぎりを頬張りました。
沢野ひとしさんが、著書『人生のことはすべて山に学んだ 沢野ひとしの特選日本の名山50』のなかで、<私をつくった山>として「川苔山」を取り上げています。渡渉あり渓谷美ありの変化に富んだ登山コースは日本の名山と呼ぶにふさわしいと思いました。「川苔山」は奥多摩10座の一角です。今年は遠征が難しそうなので、これを皮切りに奥多摩10座を制覇しようかと思い始めました。山頂からは単調な下りが続くため少々退屈しますが辛抱しましょう。終点鳩ノ巣駅まで約1時間40分かかります。レトロな鳩ノ巣駅前にお茶屋さんがあったので、日帰り登山のご褒美に生ビールを注文。緊急事態宣言発令中ながら、おおらかに酒類を提供して下さった上、おつまみをサービスしてくれた女将さんに感謝!でした。所要時間は4時間15分。
(注)以前の山頂標識は「川乗山」(地図表記と同一)だったそうですが、今は「川苔山」に統一されています。昔、付近の澤で良質の川苔が採れたことからこう命名されたのだそうです。
人生のことはすべて山に学んだ 沢野ひとしの特選日本の名山50
- 作者:沢野 ひとし
- 発売日: 2015/11/09
- メディア: 単行本(ソフトカバー)