春分の日の「奥多摩むかし道」ハイキング

3月の三連休最終日(春分の日)、前週の御前山登山に続きふたたび奥多摩へ。ホリデー快速おくたま1号に乗車してJR奥多摩駅下車、8:35発の丹波行き西東京バスに乗り継いで奥多摩湖バス停で下車するところまで、まったく同じ行程でした。お天気まで前週と似たり寄ったりの生憎の花曇。終日、気温は12~13度どまり、ときおり陽が差す程度だったのでアウターは手放せませんでした。

奥多摩むかし道」は、JR奥多摩駅から旧青梅街道をたどり小河内ダム奥多摩湖)に至る延べ10km(所要時間:4時間)のハイキングコースです。かつては交易の道として栄えたため、往時を偲ぶスポットが数多くあります。今回は、JR奥多摩駅から奥多摩湖バス停まで往路をバスで移動し、復路は奥多摩湖バス停を起点にJR奥多摩駅をめざす逆ルートを選択しました。終点をJR奥多摩駅にした方が、青梅線上りの乗車まで時間にゆとりがあった場合、軽食をとったり観光案内所を覗いたりと時間調整が容易だからです。

JR奥多摩駅前にある奥多摩町観光案内所は8:30から開いているので、バスに乗り込む前にここでコースマップを入手します。「奥多摩むかし道」のコースマップには通過ポイント間の所要時間や距離が明示されているだけではなく、下部に標高差が記載されています。WEB上からも入手できますが、とても親切なマップなのでこれを利用しない手はありません。

スタートしてから約1時間、奥多摩湖の北側斜面をトラバースしながら進みます。標高差は100メートル前後、進行方向左手が山側、右手が谷側となります。ところどころに落ち葉が堆く積もった隘路があるので、転落や落石に注意しながら慎重に進みます。途中、ダムの放水音が響いて吃驚しました。<青目立不動尊(立入り禁止でした)>を経て<浅間神社>を過ぎたあたりから急坂を下り、ベンチやトイレが完備された<西久保の切り返し>で小休憩をとりました。

ここから、街道だった当時の面影を偲ばせるスポットが次々と現れます。なかでも、牛馬の通行の無事息災を祈念する<牛頭観音>や<馬の水のみ場>がある辺りは素朴な風情が漂い、自然と足取りが緩みます。付近には馬方衆が立ち寄った茶屋(廃屋)がその名残をとどめています(凝った造りの建物もありこの一帯を是非とも復元して欲しいものです)。その先の急峻な崖に赤い屋根の人家が見えます。さながらポツンと一軒家です。世界的なクライマーとして知られる山野井泰史さんと妻・妙子さんは、かつて「奥多摩むかし道」沿いの古い民家を借りて暮らしていたそうです。街道筋に点在する民家にはどんな人々が暮らしているのでしょうか。JR奥多摩駅を起点に奥多摩湖をめざす女性グループやロードバイクで疾走する一団とこのあたりですれ違いました。

ハイシーズンなら間違いなく絶景スポットになるのは<しだくら吊橋>です。一度に渡れるのは2人まで。吊橋中央部から望む奇岩景勝地・惣岳渓谷は紅葉時期に訪れたいスポットです。エメラルドグリーンの川面と紅葉のコントラストはさぞ美しいことでしょう。近年では明治40(1907)年に一帯を襲った大水害で多摩川南岸しだくら谷から押し出された多数の巨岩奇岩が累々と集積して、「惣岳の荒」と呼ばれる渓谷美を形成したのだそうです。

後半の見どころは<白髭神社>です。林道左手の階段を躊躇せずに上っていきましょう。横幅40m・高さ30mの<白髭の大岩>の一部が社殿北側にオーバーハング状態で露呈しています。以前、訪れた那智速玉大社の摂社神倉神社のゴトビキ岩とよく似ています。岩壁そのものをご神体(磐座)と看做す自然崇拝の表れです。道々、<白髭神社>の神札を掲げた民家と何軒か見かけました。

その先の<不動の上滝>前方に立派な公衆トイレがあります。ハイキングコースには、残念ながら、前述の<西久保折り返し>の大型ベンチ以外にグループがランチ休憩できるような場所がありません。<不動の上滝>手前の開けた辺りでランチ休憩をとりました。「奥多摩むかし道」の大きな魅力は旧小河内線の橋梁やトンネルが見え隠れするところです。今は廃線となっていますが、小河内線小河内ダム(=奥多摩湖)の建設資材を運搬するために敷設(昭和27年)された延長10kmの鉄道(旧氷川駅~水根駅)のことです。「奥多摩むかし道」から少し外れた場所でコンクリート橋やトンネル(2カ所)を確認できます。

オフシーズンながら、ヤマスタの<奥多摩むかし道散策コース5種>をコンプリートして缶バッジのおまけ付き、見所満載のハイキングになりました。