東京から悪天候の栗駒山へ(3/3)~最悪のコンディション(風速17~18m)のなか登頂~

2日目は5時に起床。夜来の雨もあがり、玄関先には厚い雲間から薄日も差し込み、お日様が昇るにつれて天候は回復するに違いないと希望的観測をもってしまったのが大きな過ちでした。露天風呂に30分あまり浸かってからコテージに戻り、食卓で前日買ったパンを牛乳で胃袋に流し込み、急いで出発の準備を調えました。分別ゴミ出しを済ませチェックアウトすると、駐車場ではザックを車に詰め込む登山客数組を目にしました。

登山口<いわかがみ平>の少し手前で停車を求められ、シャトルバス運行協力代金500円を支払うと、引き換えに大根二切れを受け取りました。栗原市の担当者から、山の中腹から風速が3倍くらいになるので気をつけるようにと注意を受けましたが、この段階ではまだ半信半疑でした。わずか15分の間に、下って来る車と何台もすれ違いましたが、結果的に彼らの判断が正解でした。

<てんきとくらす>はC予報で風速は17mと予想していたようです。7時15分過ぎに登山開始、雨より強い風が気になりました。前半は樹林帯が風よけの役割を果たしてくれて、さほど苦にはなりませんでしたが、小ピーク(1408m)を過ぎると一気に展望が拓け、暴風の威力を体感する羽目になりました。登山道は沢のように水が流れていたので、足場を探しながら進みました。そのあたりで撤退を余儀なくされたクラブツーリズムの団体2組と遭遇しました。荒天下、ガイド2人で経験値の異なるツアー客15名前後の面倒を看るのは到底困難です。「(こんな登山)ちっとも楽しくない」と愚痴をこぼす中年女性客がいる一方で、「ここまで来たのだから登頂しましょう」と言い張る者もいたりして、ガイドさんも困惑していたようです。

この光景を前に、総勢8名のガイド・登山客が命を落としたトムラウシ山遭難事故のことを思い出していました。風速が毎秒20mを超えると立っていられません。高いツアー代金を支払って参加したツアー客の期待に応えなければという思いが強すぎると、ベテランのガイドであっても引き返すタイミングを見失いかねません。実際、自分も東京から丸1日かけて栗駒山の手前まで辿りついただけに、少々の悪天候であれば強行という思いが強かったように思います。この悪天候下、スニーカーにジーパン姿で登って来るカップルに何組も出喰わしました。レインウェアはもとより、手袋もキャップも身に着けずに登る蛮勇に呆れ返ってしまいました。

栗駒分岐を過ぎると、風雨はますます強くなり、山頂への道のりはより険しくなりました。雨天の登山など経験したことのない同伴者には大変申し訳ないことをしてしまいました。何とか登頂を果たした瞬間、強烈な風で転倒しかけました。最大瞬間風速は20mを超えていたと思います。写真撮影とヤマスタ(こいつが唯一のご褒美!)のチェックインを済ませ、10分そこそこで下山を開始。悪天候のなかだと、モバイルバッテリーの消耗の激しいこと。ヤマスタチエックイン直後にスマホはダウンしてしまいました。

<神の絨毯>ならぬ<濃霧の絨毯>に邪魔され、紅葉の絶景は次回までお預けとなりました。同伴者曰く、リベンジはない・・・もう栗駒山はコリゴリだということでしょうか。深田久弥は『日本百名山』の後記で「東北地方では、秋田駒ケ岳栗駒山を入れるべきであったかも知れない。」と述懐しています。来年、同伴者とリベンジに挑み、栗駒山の真価を見せつけたいところですが、果たして首尾はどうなることやら。