早春の筑波山(後篇)~奇岩・怪岩を観賞する~

日本百名山のなかで最も標高の低い山、それが筑波山です。山頂までケーブルカーとロープウェイが通じているので、登頂するだけなら造作もないことです。今回、登ってみて分かったことは実に魅力的な山だということです。先日、陣馬山まで縦走したミシュラン三ッ星の高尾山に匹敵する変化に富む山だと断言できます。ミシュランの星がつかないのが不思議なくらいです。早春の登山でしたが、外国人グループを何組も見かけました。

その魅力を大別すると3つの要素があるように思います。

1)奇岩・怪岩スポットの存在

2)山岳信仰を象徴する男体山・女体山の御本殿&歌碑

3)起伏に富んだ地形

おたつ石コースと白雲橋コースが交わる弁慶茶屋跡地でひと息入れました。まるで図ったかのように展望の拓けた休憩にもってこいのスポットがその弁慶茶屋跡地です。そこから「弁慶七戻り」(頭上の岩が今にも落下しそうで弁慶が七度も退いた謂い)を皮切りに次々と奇岩・怪石が現れます。丁寧な説明板を読みながら、ついつい、立ち止まって観察してしまいます。形状に即して、「出船入船」、「北斗岩」、「ガマ石」などと命名されていて、見ていて飽きることがありません。いずれも、風化や浸食によって周囲の斑レイ岩(黒御影の一種)が除去され、独立した岩塊が形成されたのだそうです。幾つか、写真をご紹介しておきます。

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女体山と男体山の山頂にはそれぞれ御本殿があって、筑波山神社の御祭神であるイザナミノミコトとイザナギノミコトが祀られています。2つの山頂を比較すると、スペースが少し広めで見晴らしの効く女体山山頂に軍配が上がります。さらに、弁慶茶屋跡地に近い摂社の稲村神社には天照大御神が祀られていますので、筑波山全体がスピリチュアルなパワースポットなのです。

筑波山万葉古路」と名づけられた酒迎場分岐からつつじヶ丘へ至る傾斜の緩やかな登山道沿いには、ところどころに四阿や歌碑があって、古色蒼然とした佇まいが感じられます。杉木立に囲まれているので森林浴の感覚を味わえます。大小の岩だらけの登山道にあって、唯一、心安らぐルートではないでしょうか。下山のときより、登りで利用したいところです。

ケーブルカーの終点駅とコマ展望台のある場所は、平らで広々としていて、複数の食事処が立ち並んでいます。女体山方面から下ってくると、急に視界が拡がり、眼前に最終目的地男体山が望めるようになります。双耳峰に囲まれた鞍部の景色が一段と味わい深いのです。

帰りは、ケーブルカーを利用して宮脇駅まで下りました。「筑波山梅まつり」の会場まで足を運びましたが、前日の猛烈な雷雨で見頃のはずの紅白梅が散っていました。これだけが悔やまれます。ハイシーズンに比べれば遥かに登山客の少ない早春の筑波山は狙い目だと思います。