史上最大IPOソフトバンク上場の冬景色

これほど下馬評の悪かった大型IPOは近年ではジャパンディスプレイ(6740)以来でしょうか。2014年3月19日に上場したジャパンディスプレイの公募価格は900円。店頭で2000株(三菱UFJM)、ネット証券で400株の計2400株を引き受け、初値769円(公募価格比-14.6%)で損切りさせられた苦い記憶があります。この年はリクルートの上場やヘルスケアリートの上場もあって、年間成績はIPOだけで10MのプラスでしたのでJDSの火傷は幸いすぐに穴埋めできました。ちなみにジャパンディスプレイの2018/12/20終値は79円!、唖然とさせられます。もっと遡れば、JT(1994/10)が公募価格143万円に対して初値119万円(-16.8%)という惨憺たる上場もありました。

ソフトバンク(9434)の公募価格は異例の仮条件一本値1500円でした。19日の初値は1463 円、公募価格比マイナス2.5%の残念な発進、引けにかけて安値を更新し1282円で引けました。大方の予想どおり期待外れの結果に終わりました。よっぽど好材料でも発表されないかぎり、公募価格の回復は当面ないと思っています。

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何故、これほど前評判が悪かったのでしょうか。先ず、孫氏率いるSBGの子会社ソフトバンクの上場ですから、第一印象は新味が乏しいということになります。親子上場は総じて市場で敬遠されがちです。次に、官邸主導で携帯料金を40~50%引き下げる動きが加速しており、携帯各社の株価は軒並み下落基調(NTTドコモは年初来高値から約20%も下落しました)に転じていて、将来の経営環境は頗る厳しいと言わざるを得ません。第三に、EPS(一株あたり利益)やPERという指標で競合各社と比較すると、ソフトバンクはかなり見劣りすることが分かります。EPSを基にすればソフトバンクの適正株価は1000円でも高いということになります。

(NTTドコモ) 
株価2452円(12/20)
PER 12倍
EPS 201
予想配当率4.49%
(KDDI)
株価2651円(12/20)
PER 10倍
EPS 261
予想配当率3.77%
(ソフトバンク) 
株価1296円(12/20)
PER 14倍
EPS 87
予想配当率5.78%(年間配当7500円)

最後に地合いの急速な悪化や上場直前の通信障害といった市場環境が災いしたことも否めません。おまけに次世代通信規格5Gに向けて設備投資が必要なはずなのに、5%配当や85%の配当性向を維持するといったセールストークがメディアで喧伝された結果、個人投資家特に年金暮らしの高齢者などは主幹事証券の口車に乗ってソフトバンク株に手を出してしまったのではないでしょうか。今日12/20の日経平均終値は20392.58、昨年末比-10.4%と惨憺たる状況です。個人投資家ポートフォリオは年間を通じて約10%目減りしたなかでの公募価格割れ初値・・・・上場セレモニーでは社長が「五穀豊穣」に肖り、上場の門出と繁栄を願って鐘を5回鳴らすならわしです。いやはや、史上最大のIPOソフトバンクが株式市場から吸収した金額は2.6兆円、誰がために鐘は鳴るのかと嫌みのひとつも言いたいはずの個人投資家の胸中を思うと、クリスマスどころではありませんね。