将棋界で数々の前人未踏の記録を打ち立ててきた羽生善治竜王(48)が、第31期竜王戦第7局で広瀬章人八段(31)に敗れ、27年ぶりに無冠になったことが大きく報じられています。もし羽生竜王がタイトル防衛に成功していれば、通算タイトル獲得数100期達成という歴史的偉業が実現するはずでした。
羽生が初タイトルを獲得したのは1989年の竜王戦、竜王は棋界7つのタイトル(叡王戦を加えれば8つ)のなかで最も格上のタイトルにあたります。その後はご承知おきのとおり破竹の快進撃、1996年に羽生は7つのタイトルを史上初めて独占してしまいます。将棋界を牽引してきた天才羽生善治だからこそ、失冠とか無冠という耳慣れない言葉が今日の朝刊紙面を飾るわけです。タイトルをひとつでも獲得することがプロ棋士の生涯をかけた目標だったりする厳しい世界にあって、通算99期タイトル保持とは信じられないような偉勲に他ならないのです。
通算獲得タイトル数の歴代記録を調べてみると、羽生に続く大山康晴が80期、中原誠が60期、現役の谷川浩司(56)、渡辺明(34)がそれぞれ27期、20期と続きます。藤井聡太七段に敗れ引退したひふみんこと神童加藤一二三でさえ、通算獲得タイトル数は8期にとどまります。それでもトップ10です。99期がどれほど凄い記録なのか、火を見るより明らかです。
常に戴冠してきた羽生永世七冠だからこそ、無冠がニュースになるのです。無冠というヘッドラインは羽生永世七冠以外の棋士に使われることは未来永劫ないでしょう。単にタイトル陥落で済むからです。記録は破られるためにある、そう思えば、16歳になったばかりの藤井聡太七段が、いずれ羽生永世七冠の記録に挑む可能性もないとは言えません。
ただ、羽生が打ち立てた数々の記録はまさに難攻不落の城、藤井聡太七段も含めた後進に末永く立ちはだかる絶壁であり続けるでしょう。サラリーマンであれば、殆どの人が第2の人生を考える40代後半、わずか10名しかいないA級(藤井聡太七段はまだC1級になったばかり)に踏みとどまって優勝争いをするだけでもどれほど大変なことか!自分は「力をつけて次のチャンスを掴めたらいい」と述べた羽生永世七冠の50代の更なる進化に期待を寄せるファンのひとりです。
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