両界曼荼羅図といえば東寺でしょ!

今月のブラタモリは三週連続で高野山がテーマ。9日は見逃してしまいましたが、昨夜放映された#83の「高野山空海」はなかなか興味深い内容でした。

3年前の秋、サントリー美術館で開催された「高野山の名宝展」で初めて目にした国宝<聾瞽指帰(ろうこしいき)>が番組に登場し、改めて、空海の力強く巧みな筆さばきに見入ってしまいました。入唐前の24歳のときに儒道仏三教の優劣を論じた書だといいますから、その早熟な才能には驚くばかりです。

金剛峯寺が所蔵する<両界曼荼羅図>も紹介されました。平清盛が自身の血を絵具に混ぜて大日如来の宝冠を描かせたという逸話から、<血曼荼羅>とも呼ばれています。平安時代に製作されたものですから、相応の劣化は致し方ありませんが、画面を通して見る内陣<両界曼荼羅図>はかなり色褪せて映りました。番組ガイドが<りょうがいまんだらず>と濁音で呼んでいたのも気になりました。機会があれば、この眼で確かめてみたいと思っています。8年もの歳月をかけて修復を終えたのが2015年、実際の状態はもっといいのかも知れません。

両界曼荼羅図>といえば、東寺のそれが真っ先に思い浮かびます。東寺は<曼荼羅のお寺>と呼ばれるくらいですから、数多くの曼荼羅を所蔵しています。国宝や重文に指定されたものだけでも6種類あります。2014年に灌頂院という密教道場で初公開された<両界曼荼羅図(元禄本)>を見たときの衝撃は言葉では言い尽くせません。

「後七日御修法(ごしちにちみしほ)」と呼ばれる厳粛な年頭儀式で使用されるもので、その圧倒的な存在感を前にして身じろぎすらできませんでした。鮮やかな色彩と緻密な構図に我を忘れてしまいそうになります。空海が命懸けで唐から持ち帰った曼荼羅が転写されて今に伝えられているからに違いありません。大日経を示す<胎蔵界曼荼羅>と金剛頂経を示す<金剛界曼荼羅>が一対になって<両界曼荼羅図>を構成し、密教の宇宙観を表現しています。

東寺のHPには、「曼荼羅(Mandara)は仏の悟りを得ることと解釈され、仏の悟りの境地が円輪のように過不足なく充実している様子から、<輪円具足>とも訳されています」とあります。ブラタモリの番組後、曼荼羅ミクロコスモスに無性に触れてみたくなって記事にしてみました。下の説明図(左:金剛界、右:胎蔵界)は東京国立博物館HPから拝借したものです。