PKSHA Technologyのマザーズ上場で感じること

長年IPOマーケットをモニターしていると、ときどき、知った名前が創業者だったりして驚かされることがあります。マザーズを中心とする新興市場に上場する会社は年間多くて70〜80社程度、近年上場審査基準が緩和されてきたとはいえ、企業経営者にとって上場は大きな夢であることに違いはありません。

来る9月22日に東証マザーズ市場に上場する株式会社PKSHA Technologyの代表取締役の上野山勝也氏(35)は、長男が所属していた大学研究室の先輩で聞き覚えのある人物でした。目論見書で経歴を確認すると2012年に同社を創業したとありますから、わずか5年で会社上場に漕ぎつけたことになります。本社は本郷二丁目にありますが、昨年までは東京大学産学連携本部アントレプレナープラザの一室に社屋を構えていたようです。



市場ではこうした異例の早さで成長する会社に注目が集まります。しかも、事業モデルは自社開発の機械学習技術・自然言語処理技術・深層学習技術分野のアルゴリズム中心ですから、AI関連銘柄として否が応でも市場の関心を引きつけます。

80年代以前には学生や若手研究者が起業するなど先ず考えられないことでした。有名企業に就職できれば、公務員になれれば上首尾と思われていた時代のことです。ところが、この失われた20年で自治体や企業が破綻しないという幻想が潰え、若者に対して将来の選択肢を自立的に考える契機を与えることになりました。

90年代後半、会社派遣でロンドン・ビジネス・スクールのアントレプレナーシップコースを修める機会がありました。その頃でも、日本では起業家精神という言葉はさほど定着していなかったように思います。アントレプレナーシップ研究の第一人者、HBSのハワード・スティーブンソン教授はこう言います。<アントレプレナーシップとはコントロール可能な資源を超越して機会を追求すること>であると。ヒト、モノ、カネ、ITなど様々なリソース制約を克服してこそ、イノベーションをもたらす機会追求が可能になるのだということでしょうか。

アントレプレナーシップは壮大な創業ビジネスの世界だけではなく、会社をはじめあらゆるコミュニティで発揮することができるはずです。人生も然り、年齢に関係なく新しい分野に挑戦する気概を失わないでいたいと思っています。