鍵盤ハーモニカ奏者吉田絵奈さんのライブ


南青山で鍵盤ハーモニカのライブを初体験、想像していた以上に表現力豊かな楽器に魅了されたので、ご紹介したいと思います。鍵盤ハーモニカ奏者は名古屋市出身の吉田絵奈さん、大学でピアノを専攻された後、鍵盤ハーモニカの魅力に目覚め、現在は各地で鍵盤ハーモニカのコンサート活動をなさっているそうです。

鍵盤ハーモニカはリード楽器の一種です。ハーモニカと違って吸気では鳴らすことができないため、ひたすら呼気で鳴らすのだそうです。慣れるまで長時間の演奏には苦痛を伴ったといいます。膨らました頬に空気をためてそれを押し出しながら鼻から息を吸ういわゆる循環呼吸を身に着けないと、鍵盤ハーモニカのような楽器を使いこなすことは出来ません。その循環呼吸法を体得するためハードな練習を重ねるうちに自然と腹部が鍛えられ、6パックならぬ8パックのボディが出来上がったのだそうです。循環呼吸45分47秒というギネス記録を持つサックス奏者のケニー・Gの記録を塗り替える自信があるという吉田さん、鍛え上げたアブは男勝りなのかも知れません。

その夜は、主催者のマダムが<パリ祭の後に>と銘打ったお食事付きのライブでした。しかも、出張料理人として知られるマカロン由香さんが厨房までいらして手ずからコース料理を拵えて下さいました。フランスではle 14 juilletなのに、日本ではルネ=クレール監督の映画が「巴里祭」と訳出されたために、ご年輩のマダムには今も「巴里祭」なのでしょうね。

ピアソラあり、バッハあり、オリジナル曲ありのジャンルにこだわらない選曲が却って良かったように思います。鍵盤ハーモニカに備わっている多彩な表現力が余すことなく伝わってきました。今年はタンゴの革命児と呼ばれたアストル・ピアソラが亡くなって25年、吉田さんが奏でる力強いリベルタンゴに聞き惚れてしまいました。ピアソラのようにジャンルや国境を超えた音楽家をめざして欲しいと思いました。ライブ終盤、吉田さんが手にしたのは陸前高田の被災松から作られたという鍵盤ハーモニカ(写真上で吉田さんが手にしているものです)、鈴木楽器製作所が吉田さんの依頼で3カ月かけて製作したものだそうです。被災地にも足を運んで演奏活動をなっている吉田さんを心底応援したくなりました。