昨夜は飯田みち代さんの後援会の世話人を務めるNPO法人代表K氏のお誘いで銀座にある王子ホールへ。ヘッドハンティングが本業でありながら、文化・芸術分野でも貢献なさりたいと2008年にNPO法人を立ち上げたK氏の熱意には頭が下がります。リーマンショック以降、K氏の主戦場である外資系金融機関は間断なくリストラを断行し人材市場は先細る一方だけに、数多くの求職希望者を抱えるK氏の胸中は複雑だったに違いありません。会場で挨拶を交わしたコンサルタントの表情も心なしか俯き気味に見えました。
先行き不透明なこの時期に敢えてコンサートを協賛したのは経営者として心意気を示したかったからでしょうか。K氏の誘いで会場を訪れたゲストのなかには心癒された人が数多くいたはずです。難病を克服して舞台に立ち続ける飯田さんは、前半、代表的なアリアに加えて日本では未発表の歌劇『死の都』から『私に残された幸せは』を披露されました。震災被災者への鎮魂を込めた美しい旋律は遥か東北の被災地にも届いたように思います。初共演のヴァイオリン奏者吉田恭子さんは軽やかな演奏で聴衆を魅了し、なかでもラフマニノフのピアノ協奏曲第2番第二楽章をクライスラーが編曲した『祈り』の独奏には聞き惚れました。インターバルを挟んで後半は一転、ジャズアレンジのムーンリバーや映画タイタニックの"My Heart Will Go On"で堅苦しい雰囲気を和ませてくれました。コンサートが幕を閉じて銀座四丁目の交差点に出ると人影はもうまばら、静かな年の瀬になりそうな気配を感じました。今年も様々な思いを重ねながら来し方を振り返る時期が迫っています。