2015年京都:秋の特別公開〜伊藤若冲の天井画を仰ぎ見る〜

ここ数年、11月第1週は京都で数泊して、特別公開される寺社仏閣を訪れるようにしています。(公財)京都古文化保存協会が春と秋に実施する催しで、普段は非公開の文化財を拝観できるのが利点です。


今年のお目当てはなんといっても、初公開されることになった伊藤若冲晩年の天井画。平安神宮の大鳥居からほど近い信行寺というお寺に秘蔵されているものです。もともとは石峰寺の観音堂にあったものですが、明治の廃仏毀釈に伴い、天井画だけが信行寺に寄贈されたという来歴のようです。

10時少し前に山門前にたどりつくと既にかなりの行列ができていました。最初で最後の公開なんてメディアが煽るので、期間中、行列が途絶えることはないでしょう。待つこと半時、数十名単位で本堂に上がって、ひたすら天井を仰ぎ見ることになりました。なんとも風変わりな光景です。伊藤若冲作の天井画「花卉図(かきず)」は、全部で167面。北東隅にもう1面、「米斗翁八十八歳」と墨書された若冲の落款があります。84歳で死去したはずの若冲が、生前、縁起を担いで米寿と揮毫するとは洒落っ気たっぷりではありませんか。


38センチ四方の格子面に直径33.6センチの円形枠が設けられ、すべて異なる意匠で花卉が描かれています。30面にボタンが描かれ、次いで菊、梅の図案が多いようです。アサガオ、ハス、アヤメなどなど、珍しいところでは外来種のサボテンやヒマワリが描かれています。たわわに実をつけた南天の図柄(写真の図版です)が気に入りました。ユリのように白い色彩は比較的きれいな状態でしたが、歳月の経過で全体的に黒ずんだ印象は拭えませんでした。格子面の亀裂もあったりして、恒久保存するためにも京博に寄託してもらい、代わりに当時の鮮やかな色彩を甦らせた複製を飾って欲しいものです。

さながら、植物図鑑を開いているようで、あっという間に拝観時間が過ぎて、次の組との交代と相成りました。