2018年泉涌寺の涅槃会は特別な一日でした!

お釈迦様ガ亡くなったのは陰暦2月15日。現在は3月15日前後に全国の寺院で涅槃会が催されます。今年は関西の医大に通う次男の卒業式がたまたま3月15日ということもあって、前日に京都入りして念願の泉涌寺のお参りを果たしました。

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早朝、人影もまばらな泉涌寺の佇まいは格別です。山門から見下ろすように眺める泉涌寺の景色は、いつ見ても心が洗われます。両側から覆いかぶさるような梢が額縁の役割を果たしていて、とても絵になるのです。京都に数ある寺院のなかで、気品さにおいては泉涌寺に勝るお寺はないでしょう。明治になるまで飛鳥の御世から皇室の葬儀は仏式で執り行われていました。泉涌寺が「御寺(みてら)」と呼ばれるのは皇室の菩提寺だからです。

涅槃会のハイライトは涅槃図の公開です。毎年3月14日から16日までの3日間、縦16メートル、横8メートルもある日本一の大涅槃図(重量は200キロ)を拝むことができるのです。当初、東大寺に奉納される予定だったせいでしょうか、仏堂に収まらないサイズで上部下部は天井床へとコノ字に折り畳まれています。涅槃図の作者は明誉古礀、江戸中期にかけて活躍した浄土宗の禅僧です。お釈迦様とそれを取り巻く弟子たちの姿をはっきりとした輪郭線で描いているのが泉涌寺涅槃図の特徴です。


この日が特別だったのは、大涅槃図だけではなく普段は非公開の舎利殿を特別拝観できたからです。涅槃会に舎利殿参内も叶うとは望外の慶事でした。舎利殿塔内にはお釈迦様の仏牙舎利(ぶつげしゃり)が納められているのだそうです。歯は言葉を発する源、お釈迦様の教えの象徴的存在が仏牙舎利というわけです。

舎利殿の天井画は京狩野を大成した狩野山雪。堂内の決まった場所に立って拍手を打つと、波打つような反響音が木霊します。初めて「鳴き龍」を体験しました。立ち去り難い余韻に浸りながら、初夏のような陽気のなか、泉涌寺に匹敵する涅槃図を擁する東福寺へ足を向けたのでした。