甦る天井画の魅力〜建仁寺の「双龍図」〜

建仁寺を訪ね、今年1月に他界された小泉淳作画伯の傑作「双龍図」を見てきました。法堂天井に描かれた双龍図は108畳に及ぶ大作で、今にも踊りださんばかりの双龍の迫力に圧倒されました。建長寺に奉納された「雲龍図」も小泉画伯作ですので「双龍図」はお弟分にあたります。

寺院の天井に龍が描かれるのは、龍が仏の教えを助ける八部衆の一つで龍神と呼ばれるからです。多くの本山では住職が上がって仏法を大衆に説く法堂(はっとう)の天井に龍が描かれます。法の雨(仏法の教え)を降らすという意味や、龍神が水を司る神であるため火災から護るという意味 が込められています。

雲龍図と云えば妙心寺法堂の「雲龍図」や大徳寺法堂の「鳴き龍」が有名ですが、製作時から数百年を経ると天井画も襖絵同様かなり退色が進行していて、本物を見て却ってがっかりさせられることがあります。

その点、当世を代表する日本画家が高品質の岩絵具で描いた天井画には、古の傑作にはない魅力があります。基本、黒と白の色遣いにもかかわらず、鮮やかな色彩には目を瞠るものがあります。加山又造画伯が描いた天龍寺法堂の「雲龍図」(平成9年)も見事な出来栄えです。

小泉画伯は北海道中札内の廃校になった小学校の体育館にひとりこもって先の大作を描き上げたそうです。遺作となった東大寺本坊襖絵も同じ体育館で描かれています。こうして新しい日本画で飾られた古寺院を巡るのも、京都散策の楽しみのひとつです。