ロンドンオリンピックに見るお国事情

連夜の日本勢の大活躍で睡眠不足がピークに達しつつあります。金メダルの数は目標にまだまだ足りないようですが、大変なプレッシャーが掛かるなか、体操男子個人総合を制した内村航平選手の見事な演技に心底感動しました。リアルタイムで観戦した甲斐があったというものです。内村選手の活躍に続き、サッカーは男女共に準決勝進出、競泳陣もメダルを量産と日本人としては嬉しいかぎりです。8/5現在、獲得メダル数は24個(金2・銀10・銅12)になりました。

一方、女子バトミントンのダブルス戦で対戦した中韓双方が失格となるハプニングが起きました。実際に対戦の様子をTV放映で確認してみましたが、素人目にも、無気力試合と判定されても致し方ない内容でした。失格は当然でしょう。そこまで悪質ではないものの、なでしこジャパン率いる佐々木監督の2位通過を目論んだ<ゴールを狙うな>という発言も同根だと感じます。五輪憲章を持ち出すまでもなく、桧舞台が衆目に晒されていることを監督は自覚すべきでした。処分がなかったから良かったものの、アスリートたちの大健闘に水を差したことは否めません。

前代未聞の4組8人が失格となった女子バトミントン、その背景にメダル増産を掲げる各国の思惑が見え隠れします。体操男子個人総合は総じて見応えのある内容でしたが、決勝の舞台に団体戦を制した中国勢がひとりも見当たらないことに違和感を覚えました。どうやら、負担の多い個人総合を回避させ種目別に選手を特化させるというのが中国のメダル増産戦略のようです。姑息な手段のように映りますが、オリンピックが国威発揚の恰好の場であることも紛れもない事実。日本のメディアのみならず大多数の国民もメダルの数にこだわっているのです。敗者に対する取材陣の不用意な発言にはその傾向が顕著です(唯一、北島選手が敗れたとき<素晴らしい挑戦でしたね>とマイクを向けた取材が例外でしょうか)

昨年6月、スポーツ基本法が成立し「スポーツ立国」を掲げて遅らばせながら日本もスポーツ振興に本腰を上げ始めました。現地ロンドンには<マルチサポートハウス>が初めて設置され、高圧酸素カプセルや炭酸泉のプールなど選手たちの疲労を癒すための設備が整えられたそうです。それでも、日本のスポーツ強化費(52億円)は隣国韓国のそれに足元にも及びません。韓国は150億円かけて体格的に近い日本人が得意とする種目(柔道やレスリング等)を強化し、今や日本を凌ごうとしています。欧米人対比体格的に叶わないと判断された種目には強化費を注ぎ込まず、さらに、メダル獲得へのインセンティブとして終身年金や兵役免除の特典も用意しています。柔道男子の不振も、町の道場が激減するなか裾野拡大策を怠ってきた柔道界の失策かも知れません。日本政府にも五輪入賞者あたりまで裾野を拡大して、インセンティブを用意しアスリートのセカンドキャリアを経済的に後押しして欲しいものです。

領土問題にせよメダル獲得へのこだわりにせよ、日本は大事な場面で外国と競うことを躊躇いがちです。4年に1度のオリンピックというイベントに向けて、独立国家が総力を上げる過程で様々な経済効果が期待できます。健全な長寿社会の実現にもスポーツ振興のもたらす効用は大きいのではないでしょうか。産業の活力が喪われて久しい日本、スポーツを通じてsustainable growthを目指すという視点は悪くありません。2020年の東京オリンピック誘致を本気で応援しようと思います。