毎年8月が訪れると書棚から『日本のいちばん長い日』(文春文庫・半藤一利著)を手にとって再読することにしています。一億総玉砕が叫ばれたこの時代に戦争を終結させることが如何に難事であったかを知るにはこの本を読むに限ります。大方の社会人に昭和史の理解が欠けているのは中等教育の過程で歴史の授業がコマ不足のために現代史まで辿り着けなかったからだと言い訳がましく説明されますが、国土が焦土と化して終戦を余儀なくされた1945年前後の時代情況について今を生きる我々が不知では済まされないと思います。TV局は終戦記念日前後に特番を組んで戦争映画を放映しますが、視聴率は必ずしも高くないようです。今、小中学校で教壇に立つ先生方は戦後生まれで学校で現代史を教わっていないわけですから、生徒たちが終戦当時の歴史を先生方から学ぶことは一般論として難しいと考えられます。思い切って従来のシラバスを変更して「現代史」の特別講義を加え専門から授業を受けられるように工夫してはどうでしょうか。先日、バーで偶然知り合い意気投合した元興銀マンと昨年文庫された『永遠の0』の話題で盛り上がりました。彼は呉の出身でした。同書は特攻兵の孫たちが戦争の生き残りを訪ね亡き祖父の生きた証を収集していく様子を描いたフィクションですが、史実に即して太平洋戦争の転機となった多くの戦いにも言及していますので、昭和史に興味のある十代二十代に特にお薦めです。
- 作者: 半藤一利
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