天満天神繁昌亭|上方落語の定席で過ごす贅沢

大阪天満宮の敷地内に上方落語の定席・天満天神繁昌亭が誕生したのは2006年9月。メディアがこぞって取り上げたので、誕生当時のことをよく記憶しています。大阪といえば、「なんばグランド花月劇場」に代表されるような演芸場が其処かしこにあるようなイメージがありますが、落語の定席が大阪に復活するのは半世紀ぶりだったのです。落語の定席が4軒ある都内と比べて意外に感じたものでした。定席復活に奔走したのは、上方落語協会会長だった桂三枝師匠(現:六代目桂文枝師匠)をはじめ上方落語協会幹部や商店街の皆さんだったといいます。

Osaka Metro堺筋線扇町」駅で下車して、日本一長いとされる全長2.6kmの商店街「天神橋筋商店街」を南に向かって歩きます。アーケードの天井にぶら下がった赤い提灯を目印に左折すると、大屋根が架けられた繁昌亭が目に飛び込んできます。木戸口周辺に大勢のお客さんが屯して、出演者の名前を記載した看板を熱心に覗き込んでいます。法被を着たスタッフの賑やかな呼び込みも手伝って、開演前から気分が盛り上り放しです。コロナ前は年頭に開催される文枝師匠の独演会@有楽町朝日ホールに何度か足を運びましたが、定席となると新宿末廣亭以来で本当に久しぶりです。

昼席は、13時30分開演で「仲入り」と呼ばれる10分間の休憩を挟んで16時10分まで。仲入り前の文喬師匠が披露した桂文枝師匠の創作落語『妻の旅行』は何度聞いても捧腹絶倒です。若手からベテラン真打ちまで落語家さんの噺以上に、色物さんの津軽三味線やジャグリングの芸に引き込まれました。女性ふたりの津軽三味線ユニット「来世楽(らせら)」のパワフルなパフォーマンスに聞き惚れてしまいました。トリの四代目桂春団治がかけたのは『愛宕山』。上方落語名跡の噺にしては、歯切れが悪く全体に精彩を欠きがっかりさせられました。これでお開きと思いきや、飛び入りゲストで笑福亭鶴瓶師匠が登壇し、ネタ下ろしと称して『芝浜』ダイジェスト版を披露してくれました。ビッグサプライズで会場が大いに沸いたことは言うまでもありません。

天満天神繁昌亭の客席数は216。写真(上)のように高座と客席の距離が近いのでライブ感は半端ありません。昼席の前売り券は芸人さんに申し訳ないような木戸銭設定の2500円(当日券は2800円)也。次から次へと趣向の異なる噺が聞ける定席でのんびりと過ごす半日は何物にも代えがたい贅沢です。