栗にまつわるミニレクチャー~ネットに入った「栗」の品種は?~

今年秋、日本有数の栗の産地・笠間市を2度訪れました。自宅から距離にして140km、クルマで2時間。都内からのアクセスは悪くないので、収穫の秋の週末ともなれば大勢の観光客で賑わいます。2019年9月にオープンした<道の駅かさま>には栗専門のカフェやショップが軒を連ね、併設の駐車場はごった返していました。歩道の隅に並んだ可愛らしい栗のオブジェが印象的です。

下の写真は笠間市内では断トツの人気店「U-A Cafeモンブラン」で提供される「プレミアムモンブランケーキ」です。1度目は雨天に訪れたにもかかわらず売り切れ。写真の「プレミアムモンブランケーキ」は2度目にようやくありついたとき撮影したものです。周辺は「石切山脈」と呼ばれ、最高級石材・稲田白御影石の産地として知られています。モンブランの載ったゴージャスなお皿がその稲田白御影石製です。

<道の駅かさま>の直売所で気づいたことがあります。この直売所では栗の品種がきちんと明記されて売られていたのです。都内のスーパーで栗を買う場合、産地表示はあっても栗の品種(新種の「ぽろたん」を除いて)が明記されていることは殆どありません。市場に出回る代表的な品種にかぎっても、下表のように、出荷時期や特徴が異なります。直売所にもネットに入った栗が売られていましたが、中身は一体どんな栗なのだろうかと新たな疑問が頭を擡げてきます。

最近、会員制のスイーツ店"Mont Blanc STYLE"を訪れたとき、店主の竿代さんが食後にミ二レクチャーして下さった御蔭でこの疑問が氷解しました。栗の収穫量を上げるためには品種の異なる栗の木を混植する必要があるのだそうです。確かブルーベリーも花期の近い同一系統から混植すると聞いたことがあります。同じ道理ですね。栗は自身の花粉では受粉しづらい性質(「自家不和合性」)が強く、1本の木では実がならないというわけです。そうなると、収穫時期に品種をより分けるのは農家にとって相当な手間になりますから、単に「栗」と表示して市場に流通させることになるのでしょう。

続けて、竿代さんは果実は総じて小粒の方が断然美味しいのだと力説します。栗も然りで、高値で商いされるのは大粒であっても、味や香りが良いのは中粒や小粒だといいます。収穫の秋、"Mont Blanc STYLE"で提供される《プレミアム・モンブラン HITOMALU》は「人丸」という小粒の品種から作られます。生産農家が少ない「人丸」を店主自ら栗畑を耕して栽培しているということです。「人丸」で作られた「モンブラン」を食べられるのは、日本中探しても、"Mont Blanc STYLE"と本店「和栗や」だけなのです。