カタール・サッカーW杯・グループステージに《一喜一憂》

日本が初戦でドイツを2-1の逆転勝利で下した翌日、スポーツ紙はもとより全国紙の一面にも「ドーハの歓喜」の五文字が躍りました。中東で訪れたことのある都市はUAEのドバイだけです。コロナ禍さえ長引いていなければ、現地ドーハで間違いなく観戦していたはずです・・・渡航制限が大幅に緩和され、世界中からサポーターがカタールの首都ドーハに集結しているのを見て渡航しなかったことを後悔しているところです。

初戦前半の不甲斐ない日本の戦いぶりに(テレビ観戦者のひとりとして)半ば敗戦を覚悟して臨んだ後半、システムが突如3バックに変わり、75分の堂安律による同点ゴールに続いて、83分には浅野拓磨が守護神・ノイアーのニアサイドを撃ち抜く見事な逆転シュートで予期せぬドラマチックな結末が訪れました。前半は完全にドイツが支配していました。前半後半を通じてわずか26%のポゼッションで日本がドイツに敗北をもたらした恰好です。世界中のメディアが驚愕するのも無理はありません。なにしろ、初めて日本が国際Aマッチでドイツから白星を挙げたのですから。

試合直後の円陣で選手たちに向かって森保監督は興奮気味にこう言い放ちました。

《みんなの努力が結果に出て良かったよ / ただし、ただし、一喜一憂するなよ / 次が大切だぞ / これを生かして、また次に勝利すること / しっかりと準備してやっていこう / お疲れ様でした。》

どこにでもいそうなサラリーマンのような風貌の森保監督は、W杯本戦出場に至る長い道程において、メディアやファンからの悪評に度々晒されてきました。事実、サッカーファンの多くが森保監督を頼りないリーダーだと思っていたはずです。ドイツ戦の歴史的勝利をもたらしたのは、選手起用法も含め随所で的中した森保采配の賜物です。掌返しで監督を賞賛するファンは節操のなさを深く自省すべきでしょう。テレビから聞こえてきた森保監督らしからぬ熱の篭もった言葉を耳にして胸が熱くなりました。

昨日、日本時間19時から行われた第2戦で、日本はスペインに0-7で敗れたコスタリカと対戦、大方の期待に反して0-1で日本が敗れる否や、一部のファンは戦犯探しに転じ、失点につながるミスをしたDF吉田麻也やGK権田ら守備陣を袋叩きにし始めます(伊藤洋輝選手の度重なるバックパスにはさすがに閉口しましたが・・・)。とまれ、2021年9月2日、アジア最終予選(グループB)初戦ホームでオマーンに0-1で敗れたときのサポーターやファンの反応と瓜二つです。いまだに収まらないこうした一部熱狂的ファンの豹変的な反応をいつも苦々しく思っています。「一喜一憂するなよ」と力強く選手を戒めた森保監督の言葉は、暗にファンへも向けられたものだったのでしょう。W杯の怖さを一番知っているのは指揮官である監督です。FIFAランキングの格下とはいえ、コスタリカは手強いに違いないと森保監督は思っていたからこそ、声を大にしてこの言葉を発したのです。

元日本代表MF本田圭佑のABEMA解説が好評です。本田も現役時代しばしばサポーターやファンから誹謗中傷されたひとりです。下馬評では日本のグループステージ敗退濃厚でしたから、本田圭佑の言うように「(僕らが)勝手に(決勝トーナメント進出を)期待して、勝手にがっかりしているだけ」なのです。テレビやABEMAを前にしてひとりで《一喜一憂》するのは一向に構いませんが、SNSなどでミスをした選手を殊更に誹謗中傷するのは非礼でマナー違反の行いです。

グループステージ最終戦となるスペイン戦のキックオフは、12月2日日本時間午前4時です。ドイツに続き、格上の強豪スペインと日本代表がW杯の大舞台で戦えることを素直に悦び、早朝観戦を楽しみたいと思います。願わくばドイツ戦のような展開になりますように。