EVは重たすぎないか?~EVは本当に地球温暖化対策の切り札なのか?~

メルセデス・ディラーのベテラン担当者Oさんと定期的にクルマ談義をすることにしています。1年以上続く世界的な車載半導体不足でショールームへ新車を見に行く機会が激減しているので、つい先日、近場の焼鳥屋さんへOさんを誘って一杯やったところです。話題の中心は否応なくEVに関することばかりです。昨年7月、メルセデス・ベンツが「2030年完全EV化」方針を発表して以来、日本でも同社は立て続けにEQA・EQB・EQCとシリーズのラインアップを拡充しているからです。

現時点ではどうしてもEV購入に前向きになれません。従って、メルセデスがガソリン車の供給を停止するタイミングで最後のガソリン車に乗り換えるなど、中期的プランを練っておく必要があります。EVはこれまで地球温暖化対策の切り札と呼ばれてきましたが、個人的にはそう判断するのは時期尚早だと思っています。そして、近い将来、EVに対する風向きが変わるのではないかと密かに期待したりもします。

Oさんから指摘されて初めて知ったのは、EVの車両重量がガソリン車に比べ途方もなく重いということです。昨年、購入したばかりの自家用SUV(GLA35)の重量1690kgに対して、同クラスのEQAの重量は300kg増しの1990kgです。電動化の弊害の際たるものはバッテリー搭載に伴う車重の飛躍的増加です。車重の増加は走行性能や燃費性能に悪影響を及ぼすため百害あって一利なしのはずです。加えて、人身事故が起きた場合の被害者への衝撃増加も気懸りです。

最大の懸念材料はタイヤの摩耗です。Oさんからはガソリン車であってもSUVは重たいのでタイヤの交換は2年に一度が望ましいとアドバイスを貰っています。300kg重たいEQAの場合、タイヤへの負担はより過酷に違いありません。2019年7月、英国政府は「クルマの排出ガス以外の汚染物質(NEE)対策が必要だ」という研究結果を明らかにしました。Non-exhaust Emission(s)とは排出ガス以外の排出物を指し、タイヤの摩耗、ブレーキパッドの摩耗、道路の損傷などから発生する微粒子のことを言います。こうしたマイクロプラスチックは海洋汚染の元凶でもあるのです。一般・高速道路の整備コスト増大も予想されます。

気温上昇が抑えられる代償として海洋生態系への影響が危惧されています。ほかにも、自動車の安全運転に欠かせないEVの修理や点検が万全な態勢で行われるのかという不安は払拭できないでいます。究極のゲームチェンジャーであるEV化の流れに今ひとつ得心がいかないのは無理からぬことなのです。