今年に入って、J-REIT市場に大きな変化が見られます。2020年3月の新型コロナウイルス感染拡大に端を発したJ-REIT市場の崩落は凄まじいものでした。3月19日の東証REIT指数終値は1145.53まで急落、2月末の指数が2017.50だったのでわずか3週間で43%も下落したことになります。黒田総裁率いる日銀が量的・質的金融緩和に乗り出す前の2013年1月以来となる、凡そ7年2ヵ月ぶりの安値水準でした。それまでREITの主たる買い手だった地銀勢が決算期末を控え損切りしたのだと報じられました。市場規模が10兆円を下回る水準で投げを打てば、売りが売りを呼ぶ展開になることは明らか。レゾン・デートルの欠片すら見いだせない愚かな地銀さんには、もう金輪際、株式市場にはお出ましにならないようお願いいたします。
東証REIT指数は、日銀の追加緩和策(年間900億円から1800億円へ増額)により、徐々に回復。足元、1600台後半で推移していますが、日経平均と比較すると戻りは鈍いと言えます。
一方、これまで主役だったオフィスREITの株価がこのところ軟調です。2001年9月のREIT市場創設以来、旗艦銘柄として君臨してきたのは三井不動産がスポンサーを務める日本ビルファンド投資法人(8951)と三菱地所のジャパンリアルエステート投資法人(8952)です。リモートワークの普及でテナント需要が衰退するのではないかとの思惑から、オフィスREITが売られ、代わりに物流施設REITが積極的に物色されています。結果、これまで不動の時価総額1位だった日本ビルファンド投資法人に、後発の日本プロロジスリート投資法人(3283)の時価総額が肉薄しているのです。
● 日本ビルファンド投資法人(8951)株価598000円 8443.7億円 配当利回り3.60%
● 日本プロロジスリート投資法人(3283) 株価333500円 8223.6億円 配当利回り2.84%
7月15日現在、利回りの低いTOP3銘柄は物流系銘柄が独占しています(大幅減配のインヴィンシブル投資法人は除外)。いずれも利回りで3%を割り込んでおり、投資妙味が感じられません。スポンサーの弱く時価総額も1000億円以下の所謂クズ物流系REITも買われています。
● 三井不動産ロジスティックスパーク投資法人(3471) 2.70%
● 日本プロロジスリート投資法人(3283) 2.84%
アイビー総研の関大介氏は、「利回り狩り」のターゲットは安定性が高い住居系へ向かい、企業業績の回復に伴いオフィスREITに波及するだろうと述べています。都心5区の空室率を1%引き下げるためには、7万坪を超える在宅勤務が必要になるそうです。全く同感です。事務はリモートワークで何とかなるとしても、収益に結びつくような商談や事業計画の立案などは、対面なくしてあり得ないと思っています。売られ過ぎた三菱・三井がスポンサーのオフィス銘柄に買戻しが入るのもまもなくでしょう、株価に注目しています。