米ブルックス・ブラザーズの経営破綻とWSの凋落

ブルックス・ブラザーズ(以下:「BB」)と聞けば、パリッとしたビジネススーツに身を包みウォールストリートを闊歩する投資銀行マンを思い浮かべます。ボタンダウンシャツを世に送り出したのもBBでした。古くはJFKオバマ前大統領もBBを好んで着用するそうです。創業200年を超える老舗ブルックス・ブラザーズが経営破綻したと知って、ブルックスお前もかと、ちょっぴり淋しい思いに囚われています。NYに勤務していた90年代前半、サスペンダーにプレスの効いたジャケット姿が定番ビジネスファッションでした。それから30年弱、高級品ブランドBBさえ、ファストファッションの圧倒的競争優位の趨勢に抗しきれなかったのでしょう。そこへ、新型コロナ禍がとどめを刺した感は否めません。

リーマンショック以降、銀行傘下のインベストメントバンカーにかつての勢いは感じられません。一方、GAFA+Mが急速に擡頭し、ビジネススーツに代わって、ジーンズやTシャツなどのカジュアルウエアが瞬く間にIT系職場や新興企業に浸透し、ビジネススーツは無用の長物となりつつあります。日本では、お堅いイメージの金融機関や財閥系企業はまだそこまで崩れていませんが、官公庁ファッションはかなり緩くなってきている印象です。ネクタイにスーツ姿という制約のなかでオシャレを楽しんだ昭和-平成時代が却って懐かしく思えてなりません。オンとオフの境界が曖昧なファストファッションをビジネスシーンに持ち込むのは、どちらかと言えば好みではありません。オンに切り替えるとき、ビジネスユニフォームに身を包んだ方が緊張感が昂まってすぐ戦闘モードに入れるという思考は、今の時代でも理に適っていると思っています。

ワードローブに収まったBBの紺ブレはともかく、ロゴ(ゴールデンフリース:子羊)入りTシャツは写真のようにかなりくたびれています。ここに来て、米BBとは資本関係にない日本法人も8月末までに不採算の10店舗を閉鎖すると発表しました。既存店の在庫は十分確保されているそうです。おまけに目下サマーセール中ですから、近々、軽井沢へ出掛けてプリンスショッピングプラザの店舗を覗いてくることにしましょうか。