戦車映画も悪くない〜『T-34 ナチスが恐れた最強戦車』(2018)~

「潜水艦映画にハズレなし」という名言は今日も健在ですが、戦車映画にも傑作は少なくありません。古くは『パットン大戦車軍団』(米・1970年)、近年であればブラピ主演の『フューリー』(米・2014年)あたりがすぐに頭に浮かびます。

第二次世界対戦中、圧倒的な強さを誇示し、史上最強の戦車とされるのがソ連軍の主力戦車T-34でした。1939年に宿敵同士のはずのソ連とドイツが「独ソ不可侵条約」を締結したことは世界を驚愕させました。映画『T-34 ナチスが遅れた最強戦車』(以下:「T34」)は、やがてドイツ軍が不可侵条約を破棄して自陣に攻め込むことを予想したソ連が新型戦車開発に着手、試作戦車をスターリンに披露しようと自走させるところから始まります。1941年6月22日にドイツ軍がソ連領土に侵攻、不可侵条約は事実上破棄されますから、ソ連の読みはドンピシャだったわけです。

といっても、試作戦車開発工場からモスクワまでの距離は800km、しかも秘密裏に試作戦車2両が道なき道を進むわけですから、途中、山賊に襲われ、極秘情報を入手したナチスに行手を阻まれ、果ては味方であるはずの赤軍から攻撃を受けることになります。二両の試作戦車に同乗したのは、開発責任者に若き少尉、装甲担当の若い女性技術者などなど。「T34」は実話に基づく映画ですが、コメディっぽさが少し実話のリアリティを損なっているのが気になりました。山賊から銃撃され、穴だらけになった燃料タンクが外付けなのも気になって仕方がありません。どこからが脚色なのか判然としないのであれば、丸ごと楽しむのが一番です。

ウェブ上でT-34戦車についてこんな説明を見つけました。

T-34の最大装甲厚は45㎜ですが、避弾経始といって装甲を傾斜させる方法によりそれ以上の防御力をもっていました。口径の大きな76.2㎜砲を搭載し、最高速度は55㎞/hで、広い接地圧の履帯をもっていて、ぬかるむソ連の土壌においても機動力でドイツ戦車に勝っていました。

重厚そのもののイメージの戦車が、ソ連の大草原をトラック並みに疾走する様は圧巻です。第二次大戦前から島国日本は巨大戦艦建造に心血を注ぎ、陸続きの同盟国ドイツやソ連は艦船のみならず戦車開発にも血眼になりました。戦車映画も、潜水艦映画同様、第二次世界大戦の実相を知る上で欠かせない存在です。「T34」を観て、戦車映画も悪くない、そう思い直したところです。